[論説]水稲の統計調査 現場との乖離、検証必要
農水省は、2024年産の水稲作況は全国で101、主食用米の収穫量は679万トンと発表した。収穫量は前年より18万トン多いにもかかわらず、今も「令和の米騒動」の影響は長引いている。政府は既に備蓄米を31万トン放出した。小泉進次郎農相は、随意契約を活用したさらなる備蓄米の売り渡しを進めると表明し、早期の需給改善を目指すとしている。
需給逼迫(ひっぱく)が長引く背景には、買い付け競争の激化や、米を確保しておきたいという不安感から、生産・流通・消費各段階での備蓄が増えていることなどがある。ただ、それ以前に、「国の作況調査ほど米が取れていない」と指摘する声が現場から上がっている。特に24年産米については、そうした声が強い。
水稲の統計調査は、全国8000筆の水田を無作為に選定して手刈りし、10アール当たりの玄米収量を算出する。生育具合の指標となる作況指数は、地域に合ったふるい目1・85ミリや1・9ミリなどを採用し、平年収量と比べて算定する。収穫量は、飯米にできる玄米の総量を把握するため、ふるい目がより細かい1・7ミリを採用しており、農家の段階で公表値を高く感じやすい一因となっている。
ただ、同省は、ふるい目別の収穫量を別途公表している他、コンバイン刈りによる脱粒分も補正している。こうした調査の概要が農家に伝わっていない可能性もあり、より分かりやすく公表する必要がある。
精米段階での歩留まりも課題だ。直近2年は猛暑により白未熟粒や胴割れ米が増えた。歩留まり率は通常91%といわれるが、23年産は88%に下振れした卸もあり、単純計算すれば米の流通量はそれだけで21万トン減少する。精米段階での目減りは、気候変動が常態化する中で、今後も増える。需給見通しや生産計画を立てる上で、こうした歩留まり率も考慮する必要がある。
水稲作況など農林水産物の地方統計に携わる職員数は、同省OBを含めて24年が約1700人と、ここ5年で300人(15%)の減となった。
同省は職員の減少は、統計の精度に「問題ない」とするが、なぜ現場との乖離(かいり)が生じるのか、生産者やJAへの聞き取りを始めた。統計は現状を正しく把握し、効果的な政策を打つ上で欠かせない。検証を求めたい。