
「うちもヒヨドリに食べられました」。ヒヨドリの被害を取り上げた本紙「農家の特報班」の記事を読んだ埼玉県の男性からメッセージが届いた。男性の畑に行くと、周辺の環境からヒヨドリに狙われやすい、ある傾向が見えてきた。
情報を寄せてくれたのは、埼玉県鴻巣市の植出大輝さん(33)。50アールの畑で40品目の野菜を手がける。1月中旬から2月下旬に被害に遭い、主力品目のホウレンソウは全滅。芽キャベツやブロッコリーの葉も食べられたという。植出さんは「20羽ほどが野菜に群がり、悪夢のようだった」と振り返る。
畑は住宅と水田に囲まれていた。大きな庭木のある住宅も多く、畑のそばにヒヨドリの好物のかんきつの木もあった。「隠れ家となる木は切った方が良いのは分かるが、他人の所有物なのでできない」と難しさを語る。

本紙直売所川柳に「露地菜場 群れるヒヨドリ 食堂に」の句を寄せた広島県東広島市の農家・大久保安子さん(75)も、周りに栽培中の作物がない”ポツンと畑”で被害に遭った。2月から3月にかけて1度に30羽ほどが集中。ハクサイ、ブロッコリーは葉を食い尽くされて収穫が激減した。「周りは稲作が多く冬場に野菜を育てる人は他にいない。こんな被害は初めて」と振り返る。
ヒヨドリの生態に詳しい農研機構動物行動管理研究領域の山口恭弘研究領域長は、植出さんや大久保さんの畑が水田や住宅に囲まれていることから、「冬場、ヒヨドリにとってはそこにだけ食物があることになり、被害が集中したのでは」とみる。
最も有効なのは網目の細かい防鳥ネットなどで覆うことと、隠れ家となる木を切ること。難しい場合、リスク回避として作物を変えることも有効だ。「ヒヨドリはアブラナ科野菜を好んで食べる一方、大豆や根菜類は食べない。狙われにくい作物も取り入れてみてほしい」と提案する。
(高内杏奈、石原邦子)
