[サステナあぐり](2)躍動するアジアの有機農業 摂南大学准教授・谷口葉子
ところが欧米だけではなく、近年は新興国における市場も成長してきています。例えば中国は今や、米国、ドイツに次いで世界で3番目に大きな有機食品市場を有する国です。しかも、年率9・3%で成長しており、この傾向が続けば3年後には一人当たりの購入金額も日本を追い越してしまうでしょう。
生産面においても、日本の後れは目立ちます。2023年現在、世界全体の農地に占める有機のシェアは2・1%に達しており、シェアが10%以上に達する国は22カ国に上っています。ところが日本は有機JAS認証を取得していない農地を含めても0・7%のシェアしかなく、世界全体の比率を下回ります。
同じアジア地域にある国々も日本を追い越し始めています。インド、韓国、台湾は既に有機農地のシェアが2%を超えており、フィリピンやベトナムも1%を超えています(表参照)。インドは世界で最も多くの有機農家を有し、その数は235万戸に上っています。ベトナム、タイ、韓国、インドネシア、中国、フィリピンにも、日本をはるかにしのぐ数の有機農家がいます。こうしたデータを見ていると、少なくとも規模の面において、日本はアジア圏の中でも有機農業の後進国になりつつあるように感じられます。
アジアの有機農業運動は大変エネルギッシュで、今年も各地で国際会議や展示会等が開催されます。欧米だけでなくアジアにも目を向けて、国内の有機農業を発展させるためのヒントを探っていきましょう。