日本の食料自給率がカロリーベースで38%に低迷する現状は「国家を脆弱(ぜいじゃく)にしている」と指摘した。農家の高齢化や農地の減少を問題視し、防衛だけでなく食料の面でも安全保障を考える必要があると訴えた。
世界の主要国が一層の人口増加を見据え、食料の増産に動いているとし、米の生産抑制に疑問を呈した。国が需給見通しを示していることを念頭に、生産抑制の仕組みが「実質的には残っているのではないか」との認識を強調。見直すべきだと訴えた。
増産に伴う価格下落への対応として「所得補償という言い方をするかどうかは別として、(生産者への)手当ては必要だ」と述べた。ただ「今のまま直接所得補償すれば現状を固定することに他ならない。納税者の理解を得られるとも思っていない」と指摘。農地の集約や農機の共同利用、収量が多い品種の導入によるコスト削減などの努力を求める考えを示した。

中山間地域に対する支援も「厚くする必要はある」と述べた。付加価値の高い米を生産していることや、水源涵養(かんよう)、景観維持の機能を踏まえ、「水田の維持の在り方をさらに充実していくべきだ」と強調した。
米価を巡っては、1年間で2倍になったとして「かつてのオイルショックを想起させるような異様な高騰ぶり」だと言及。生産者と消費者の双方が納得する具体的な水準については明言を避けたが、米など食料は市場任せでは適正価格にはならないとの認識を示した。
米の輸出や農機の共同利用などで「JAの果たす役割も非常に大きい」とした。「なるべく現場の意見を踏まえて政策を決めていきたい」とした上で、市町村合併で「地域の声が届きにくくなった」との認識を示し、地域に根差すJAへの期待を込めた。

自らが議長を務める「米の安定供給等実現関係閣僚会議」については、2027年度からの新たな水田政策の在り方を検討すると述べるにとどめた。7月1日に次回会合を開くと明かした。
水田政策の検討で、野党の声も一定に考慮する姿勢を示した。参院選で各党の主張がどう支持されるかが「重要な考慮の要素」になるとした。「党利党略が入り始めると政策がゆがむ」とも述べ、冷静な議論を求めた。
米国との関税交渉を巡り、農業を犠牲にしない考えは「変わっていない」と強調。「米の輸入を増やすとか、ミニマムアクセス(最低輸入機会=MA)米とかを考えていることはない」と述べた。
(松本大輔)