近海はえ縄漁船への「過少配分」は2018年から累計1200トン
全日本マグロはえ縄振興協会(代表理事 安岡稔)は、資源回復により来年(2025年)から漁獲可能量の増枠が行われる見通しの太平洋クロマグロに関して、漁獲可能量の国内配分にあたって農林水産大臣に対し、要望書を送付しましたのでご報告いたします。
水産庁が太平洋クロマグロ保存管理措置の一環として法律に基づく漁獲可能量(TAC)制度を開始した2018年以降、当協会所属の近海はえ縄漁船などを対象する管理区分である「かつお・まぐろ漁業」には過去の漁獲実績より極端に少ない配分しか与えられず、不足分の累計は1200トン規模にのぼります。
当協会は、来年からの増枠を機に過去の行政の裁量ミスを是正するため、2025年から2年間、年600トン相当の漁獲可能量を「かつお・まぐろ漁業」に優先的に追加配分することを要望しました。
また、来年からの配分においても漁獲量の過半を占め、元水産庁幹部職員の再就職を多数受け入れている「大中型まき網漁業」に有利、過少配分により漁獲量が抑えられていた「かつお・まぐろ漁業」に不利なシェア算出方式(案)を大幅に修正するよう求めました。
当協会は、今後、不公平配分の是正を求めている一般社団法人・全国近海かつお・まぐろ漁業協会とも足並みをそろえ、TACのもとでの過少配分に苦しんできた「かつお・まぐろ漁業」の漁獲可能量の大幅増枠の実現に向けて、水産庁、水産政策審議会くろまぐろ部会への説明や話し合いにも取り組んでいく所存です。
農林水産大臣あてに送付した要望書の内容は以下の通りです。
農林水産大臣
江藤 拓 殿
太平洋クロマグロの国内配分に関する要望
2024年11月12日
一般社団法人 全日本マグロはえ縄振興協会
代表理事 安岡 稔
太平洋クロマグロの保存管理措置については、本年7月に北海道釧路市において開催された中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北委員会で2025年からの漁獲可能量を増枠する案を合意し、本年12月開催のWCPFC 年次会合で最終決定の運びとなっております。
現在、水産政策審議会で漁獲可能量の国内配分のあり方が議論されているところですが、これまでの経緯も踏まえ、来年からの配分にあたっては以下の点に特に留意していただくよう要望いたします。
要望1 累計1200トンの過少配分を是正すること
太平洋クロマグロ(大型魚)の漁獲可能量について、大臣管理区分「かつお・まぐろ漁業」への配分は2018年以降2021年まで4年間にわたってWCPFC基準(2002-04年平均漁獲実績)より極端に少ない配分が行われました。2022年から是正されていますが、失われた漁獲可能量は累計1200トンにも及び、多くの近海はえ縄漁業者の経営が圧迫されました。ついてはその是正措置として、水産政策審議会で議論されている「基礎比率」「基礎配分」にかかわりなく、2025年から2年間、年間600トン相当の漁獲可能量を「かつお・まぐろ漁業」に優先して追加配分していただきたい。
要望2 基礎比率の不合理を是正すること
2023年まで3年間の漁獲実績をもとにした「基礎比率」は、「かつお・まぐろ漁業」への国際基準(2002-04年平均漁獲量)より少ない配分が続いた2021年の実績も反映していますので、「かつお・まぐろ漁業」には大きなデメリットが生じます。一方、小型魚の漁獲可能量を大型魚に振り替えた「大中型まき網漁業」による大型魚の漁獲実績は底上げされ、大きなメリットが生じています。こうした配分の不公平や偏りの原因を取り除くため、「かつお・まぐろ漁業」では2021年実績を国際基準の数量に置き換え、また、「大中型まき網」では小型魚からの振り替えによる大型魚の実績を除外し、基礎比率を算出していただきたい。
要望3 大中型まき網への増枠配分を控えること
大中型まき網漁業による太平洋クロマグロ資源へのインパクトは極めて大きく、漁獲配分量も過半を占めています。国際会議においても西太平洋のまき網漁業の責任を問う声が続いており、今回の増枠分からの大中型まき網漁業への配分は控えていただきたい。
要望4 IQの見直しを検討すること
漁獲可能量の過少配分と先獲り競争が各漁業者にもたらした不自然な漁獲実績がもとになっているとの不満も多い現在の「かつお・まぐろ漁業」への漁獲割当(IQ)の見直しを検討していただきたい。増枠分にIQを適用せず、漁船間のシェア再調整を可能とするような運用も検討していただきたい。
一般社団法人全日本マグロはえ縄振興協会 事務局 担当:松本
〒415-0013 静岡県下田市柿崎26-20
電話:0558-23-3088
電子メール:info@ajtl-pa.net
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