[論説]山火事多発の時期 後始末徹底し災害防げ
愛媛県大洲市では昨年11月、山火事が発生した。発生から鎮火までに7日間を費やした。山林約20ヘクタールが焼失し、近隣地区の住民は避難を余儀なくされ、暮らしに大きな影響が出た。消火活動に当たったのは、消防隊員や自衛隊員ら延べ約2000人。今年に入り、広島県江田島市でも13日、山火事が発生。鎮火までに4日間かかり、焼失面積は242ヘクタールにも及んだ。
瀬戸内地区では酷暑が続いた昨年夏以降、降水量の少ない状態が続いている。植物が乾燥し、ひとたび着火すると瞬く間に火が広がる。西日本はまとまった雨は降っていないため、愛媛で起きた山火事では、消火に欠かせない水源確保に難儀した。
林野庁によると、2021年までの5年間で、全国で年間平均1300件の山火事が発生し、焼損面積は計約700ヘクタール、損害額は3億5000万円に上る。発火の原因は、たき火が31・5%と最も多く、次いで山への火入れが18・4%、放火7・9%、たばこ4・8%と続く。いずれも人為的な理由だ。愛媛の山火事でも、原因は、たばこの火の不始末とみられている。住民の命と、地球温暖化を防ぐ森林を守るために、日頃からの注意と備えが必要だ。
消防庁は、林業関係者に火災予防を促している。山の中で一人キャンプを楽しむ人が増える中で、たき火の始末の徹底や、たばこの投げ捨てなどの厳禁を呼びかける。失火させないことを肝に銘じるべきだ。
同庁もさまざまな対策を講じている。山火事は消火活動が広範囲に及ぶことから、発生した場合には都道府県に災害対策本部を設置し、近隣市町村や自衛隊への応援要請を求めることができる。日頃からの訓練と、連携した取り組みが欠かせない。さらに効果的な消火活動をするため、防火用水などの消防水利の設置や、万一に備えた、消防ヘリコプターの活動拠点の整備などハード面の整備も重要だ。
地球温暖化で、日本に限らず世界各地で大規模な山火事が相次ぐ。ひとたび山火事が起きれば、二酸化炭素の吸収源となる貴重な森林資源を失うばかりでなく、生態系に悪影響を与え、延焼の危機など近隣住民の命と生活を脅かす。
山間部は過疎化が進み、消火活動や消防団活動に携われる人は少ない。地域一丸となって火気厳禁を徹底しよう。