[論説]対話重視し働きやすく JA職員の減少
JA全中によると全国のJA正職員数は14万10人(2023年4月1日現在)と、10年前と比べて約2割減った。ベテラン職員の退職に加え、少子化に伴って新規採用職員の確保が年々、厳しくなっている。特にJAは、公務員や一般企業と競合し、採用難が続いている。
加えて、若者にとって転職は「キャリアアップの手段」と捉えている場合が多く、スマホの転職アプリから気軽に転職相談もできる。退職代行サービスもあり、他の業種に転職しやすくなっていることも、若手職員が組織に定着しない一因にもなっている。
第29回JA全国大会の決議でも「労働者ニーズの多様化を踏まえた新規採用職員の確保や人材育成、働き方改革への対応が必要」と提起した。「何をやるかより、誰と働くかが重要」という若者もおり、組織を維持するために人づくりは一層、重要となる。
若手職員の定着に向け、取り組みを始めたJAもある。JA北海道中央会根釧支所は、管内の単位JAの入組5年目までの職員を対象に、「コミュニケーション促進プロジェクト」を23年度から始めた。JAの枠を超えて職員が集まり、座談会やゲームを通じて対話の力を磨いた。
同支所は、JAの将来を担う人材確保に危機感を抱き、JAを離職する理由について分析。その結果、職場内でコミュニケーションが不足していることが分かった。職員同士の対話不足により、入組時に抱いていたJA職員としての志を失わせ、仕事への意欲が減退し、転職希望を抱く要因になるとした。
生まれた時からインターネット環境が整い、スマホを自在に使いこなすZ世代の若手職員にとって、トップダウン型の旧態依然とした組織に魅力を感じられない。求められるのは、ボトムアップ型だ。役職や性差を問わず、役員が「あなたはどう思いますか?」と若手や女性の意見に真剣に耳を傾ける必要がある。
JAあいち知多は経営理念などを役員が職員に直接、伝えている。意識改革の一環として全職員を対象に階層、職種ごとでグループをつくり、常勤役員と意見を交換する場を設けている。24年度からJA福島さくらも導入に向けて研修を始めた。
JAを持続可能な組織にするためは、コミュニケーションの強化が鍵となる。