[論説]「母の日」の花き商戦 国産の存在感を示す時
今年のトレンドは、赤やピンクのカーネーションに白い宿根カスミソウを添える“原点回帰”の花束やアレンジメントが多い。一方、オレンジや緑の花を加えたカラフルな色使いやヒマワリを主役に使うなど色や種類は広がる。
花きは、口に入る野菜や果実などと比べ、産地が重視されない傾向があった。だが、今年の「母の日」商戦では、大手量販店のイオンが国内産地の切り花を使ったアレンジメントを打ち出し、早々に予約で完売したという。
国産の花きに鮮度や品質の高さを求める消費者の信頼度の表れで、このチャンスを生かしたい。生花店での店内広告(POP)でも、JAや農園の名前を書いて「推し産地」としてアピールする例もある。生花店も産地も小規模が多い業界だからこそ、双方の結びつきを強めて国産花きの魅力を発信しよう。
スーパーのパック花束でも、価格ラベルにバラや菊の品種名や草花の品目名も入れ、関心を持ってもらう工夫が広がる。時間をかけて観賞する花だからこそ、品種や産地などの情報の有無によって価値は変わる。直売所の花も、単に「切り花」と表示するだけでなく、ラベルやPOPで産地の情報を伝えよう。
国産花き生産流通強化推進協議会の調査では、花を買う人の割合は長期的には減少傾向にあり、2023年は39%と4割を切った。花を買わない人の方が多くを占め、客層の拡大が求められる。
注目したいのが、若者の間で流行する「サプライズ花贈り」だ。インターネットの交流サイト(SNS)では、成人式や卒業式のタイミングで恋人や友人に花束を渡し、驚きと共に喜んでもらう動画や写真の投稿が増えている。
大手の日比谷花壇は、若年層の開拓に向けて「学割」を導入しようと、1月から同社のLINE公式アカウントに友達登録をした24歳以下を対象に割引サービスを始めた。「成人の日」向け商品を初めて展開し、想定以上の売れ行きだった。同社によると割引対象となる会員数は右肩上がりで増え、多くが毎月の割引クーポンを使ってギフト向けに購入しているという。学割の導入で携帯電話が一気に普及したように、仕掛ける価値はある。
「母の日」に国産の花を贈る習慣が根付くよう、業界を挙げて働きかけたい。