[論説]地域計画の「ひも付け」 プロセス不透明 説明を
地域計画は、10年後の担い手と農地を一筆ごとに整理した「目標地図」を作成し、地域の農地利用の将来像を農家らの話し合いによってまとめる。同省は策定期限を2024年度末とし、現在各自治体などが策定を進めている。
同省は23年度補正予算と24年度当初予算で、担い手や資金確保、地域振興、環境政策など43の事業の実施要件として地域計画の策定を求めている。25年度からは、対象事業を拡大させるという。
自治体の担当者は「いつの間にか、決まっていた。決定のプロセスがあまりにも不透明だ」などと指摘する。地域計画の根拠となった改正農業経営基盤強化促進法の国会審議では、地域計画と他の事業をひも付ける方向性について議論されてこなかった。
改正食料・農業・農村基本法では、行政運営の「透明性の向上」が明記された。各種事業の採択要件に、地域計画の策定を求める同省の姿勢は、行政運営の「透明性」が確保できているとは言えない。農政の決定プロセスの重要性を踏まえてほしい。
なぜ、各種事業と地域計画策定を連携させるのか。同省は「農地を守るためには、多様な事業に取り組まなければならない。地域計画の策定をサポートするためでもある」(経営政策課)と説明する。
こうした同省の方針について、農政ジャーナリストの榊田みどり氏は「地域計画の形骸化を助長することになる」と警鐘を鳴らす。榊田氏だけでなく、同省の姿勢を疑問視する声は複数の有識者からも相次いでいる。プロセスの不透明さや説明不足を問題視し、「地域計画の意義を損ねる」といった指摘も出ている。
同省は27年度から、全ての補助事業に農業による環境負荷軽減を義務付ける「クロスコンプライアンス」を導入する方針だが、現場での試行期間に3年間を設けた。こうした措置と比べて、地域計画の策定を各種事業の採択要件とする今回の決定は、あまりにも唐突感がある。
現場の農家からも、地域計画策定と関連する事業の選定基準があいまいであることの戸惑いや、「どの事業が、どうひも付けされるのかが分からない」(栃木県内の農家)などの混乱が広がる。
地域計画の策定は現場の農家の主体性が鍵を握る。同省は不透明な決定プロセスを検証し、説明する責任がある。