[論説]拡大するクビアカ被害 “地域の目”で早期発見を
クビアカは中国、韓国、台湾、ベトナムなどに分布し、桜や梅、桃などバラ科樹木の重要害虫だ。幼虫は樹木内部を食い荒らしながら2、3年かけて成長。6~8月に成虫になると飛び立ち、生息域を広げる。日本では、2012年に発見されて以来、今年2月末までに関東、中部、近畿地方を中心に15都府県で確認され、発生は拡大している。
成虫は体長2~4センチで胴部(クビ)が赤く、体はつやのある黒色が特徴。当初は、主に公園や街路樹で発生していたが、近年は果樹園での被害も確認されている。被害果樹は伐採後、改植すれば再び収穫できるまで長い年月がかかり、農家にとっては死活問題となる。園地に成虫や、ふんと木くずの混ざった「フラス」がないか、こまめに確認し、速やかな幼虫、成虫の防除が重要となる。
ただ、果樹農家だけで封じ込めるのは難しい。地域住民ら多くの人に協力を求め、早期発見、防除につなげたい。茨城県では6月から、クビアカの成虫を退治する「いばらきカミキリみっけ隊」の活動に参加する県民募集を始めた。捕まえたクビアカを県や市、町の対象窓口に持参すると、10匹につき500円分のプリぺイドカードを贈呈する。県は缶バッジの作成を含め、本年度は100万円の予算を確保した。
初めて実施した昨年度は、対象地域の12市町で延べ230人が参加し、3782匹を捕獲できた。夏休みなどを利用して、昆虫採集の一環としてクビアカを捕まえれば、小遣い稼ぎと自由研究の“一石二鳥”が見込める。なぜクビアカが増えているのか、環境の変化や果樹への影響などを調べることで、地域農業への理解醸成にもつながるだろう。
群馬県は、電子地図「ぐんまクビアカネット」の運用を始めた。22年度から始めた取り組みで、クビアカの写真を投稿するとインターネット上のマップに反映し、フラスや脱出孔、成虫の発見日時や場所、樹種などを確認できる。
果樹害虫はクビアカだけではない。気温上昇に伴って農水省は今後1カ月は果樹カメムシ類が北東北から南関東、東海にかけて多発するとして注意を呼びかけた。異常高温で農家は熱中症のリスクに加え、害虫の多発に直面している。地域住民の協力を得ながら害虫の発生を抑え、農業への理解醸成につなげよう。