[論説]県職員の集落支援 現場知り政策に生かせ
総務省の「ポスト・コロナ期の地方公務員のあり方に関する研究会」は、小規模な市区町村に対し、人材の育成・確保について困難な局面が予想されることから、市区町村の相談に応じて、支援することを都道府県に求めた。
研究会の中では人材交流にも触れており、職員が公務を通じてさまざまな経験を積めるよう、担当外や他部署の業務を経験する機会の必要性を掲げた。
人材交流の中で自治体職員が、集落の住民と触れ合い、課題を知ることで、現場の声を反映した政策の立案が期待できる。
実践しているのが、高知県だ。「地域支援企画員」と呼ばれる県職員が、地域住民に県の事業や情報を伝え、県民の声を県政に反映させている。こうした人材交流は、都道府県と市町村、地域住民にとって利点がある。
人材交流はこれまで、国・県・市町村の職員間や、民間企業や組織との間で行われてきた。同県が展開する地域支援企画員制度は、県内を七つのブロックに分け、それぞれに産業振興推進地域本部を設置し、そこに副部長級県職員1人と、課長補佐級の県職員1人、地域支援企画員と呼ばれる県職員複数人を配置する。地域支援企画員は基本、1市町村に1人が常駐し、市町村と連携した活動を行うのが特徴だ。
具体的には、市町村の産業振興計画の作成や実行支援、県内で行われている集落活動センターの立ち上げや運営支援、人づくり、移住促進支援などを担う。
地域に入ることをモットーに、住民の困りごとに耳を傾け、共に行動し、汗を流すことを心掛けているという。
中山間地域が多い同県では、地域住民が主体となる集落活動センターが、地域の課題を解決する機能を果たしている。同企画員は3、4年で異動となるが、現場で経験したことが土台となり、前例主義にとらわれることなく、課題解決型の県政につながることが期待される。
人口減少が進む中で、集落の機能をいかに維持していくか。この難題を市町村だけで解決するのはかなり難しい。自治体職員の確保が厳しい中、高知県の地域支援企画員のように、県職員が積極的に現場に出向いていく体制をつくることも、解決の糸口となろう。多様な人が関わる関係人口の構築は待ったなしだ。