[論説]防げヒートショック 入浴時の寒暖差対策を
気象庁は11日、日本に厳しい寒さをもたらすラニーニャ現象が発生する可能性が高まっている。前年に比べ気温が低い日が多くなる見込みだ。本格的な冬の到来を前に注意したいのは、ヒートショックへの対応だ。暖かい部屋から寒い部屋への移動など、急な温度変化で血圧が変動し、心臓や血管に負担がかかり、心筋梗塞や脳卒中の発症につながる恐れがある。高齢者に加え、高血圧症や糖尿病患者などはリスクが高いという。
これからの時期、特に注意が必要なのが入浴中の事故だ。厚生労働省の2022年人口動態統計によると、家や居住施設でのヒートショックを含む不慮の要因で、浴槽内で溺死した人は6084人。その9割以上は65歳以上の高齢者が占める。同年の高齢者の交通事故死者(2154人)の2・7倍に上る。
東京消防庁の緊急搬送データによると、浴槽で溺れる事故で搬送された高齢者の約9割は命の危険がある状態で、特に11月から2月の搬送が目立つという。要因として、暖かい部屋と寒い脱衣所や部屋との寒暖差、熱い湯に長く漬かることでの体温上昇による意識障害などが挙げられる。
消費者庁や市町村も対策を呼び掛ける。古い家屋ほど隙間風が多く入り、居間以外は暖房を使わない場合もあり、温度差は大きくなりやすい。脱衣所やトイレなどでは小型の暖房器具などを設置しよう。温度差を減らすため、入浴前には脱衣所や浴室を暖めておこう。湯温は41度以下、湯に漬かるのは10分ほどが目安。浴槽から急に立ち上がらないことも肝心だ。
日本気象協会では、10月から3月まで「ヒートショック予報」を発表している。全国約1900地点について7日先まで、ヒートショックのリスクの目安を予測する。天気予報と標準的な住宅内の温度差などを基に、「警戒」「注意」「油断禁物」の3ランク5種類の表示で注意を促す。天気の急変にも対応できるよう短期予報にしており、「現時点では北日本や日本海側を中心にヒートショックへの注意を促しているが、今後は全国的に対策を取る必要がある」と同協会。こうした情報も積極的に活用したい。
寒さが本格化する前に、屋内の寒暖差を調べ、小型暖房器の準備や重ね着など、できる範囲で備えよう。心がけ一つで守れる命はある。