[論説]不安定化する青果流通 消費分析し業界連携を
天候不順の影響は長期間、多くの品目に及んでいる。リンゴ、ミカンは一昨年の猛暑で木が疲れ、昨年の開花数の減少に加えて酷暑などが重なったため、キャベツは秋の残暑と12月の低温、少雨により、いずれも市場への入荷量が大きく減少している。
全国大手7卸平均となる日農平均価格の1月の前年比は、リンゴ「ふじ」が27%高、普通ミカンが46%高、キャベツに至っては3倍の高値となった。量販店は、前年の価格や入荷量を参考に計画販売を組む。相場の変動はこれまで「5%前後」とされ、量販店の特売などでは、仲卸が時に欠損を負担しながら支えてきた。だが、これだけ高騰すれば、それも難しい。
青果業界は、かつては青果店を中心としたせり取引が中心で、品物や相場を見ながら柔軟に需給調整していた。だが、量販店の台頭で相対取引が主流となった現在、交渉による単品大量流通となり、実際に青果物を評価し、消費のニーズを反映しづらい面が出ている。
こうした流通の硬直化は以前も指摘されていたが、異常気象が常態化する中、改めて青果物取引の変革が求められている。まずは消費の実態を見ることが大切だ。消費は二極化が進み、百貨店やギフト需要など品質を重視する層と、量販店で値頃感を追求する価格重視の層に分かれる。
特に量販店向けは、販売価格と生産者の手取り確保をどう両立させるかが課題となる。例えば規格や資材を簡素化する、配送方法を見直すなど、コスト削減の取り組みを着実に進める必要がある。
消費者の実情に合わせた提案も必要となる。例えばかんきつは、人気が集中し需給が逼迫(ひっぱく)する品種がある。しかし他にも安定供給ができ、種があっても味が良いなど、特徴のある品種は多彩にある。持ち味をうまくアピールし、人気を分散させてはどうだろう。野菜は実需に合わせ、品目ごとの栽培バランスをどうするか、中長期的な視点に立った産地形成をJAグループとして先導したい。
政府は、今通常国会に農産物の価格形成に向けた改正法案の提出を予定する。売り手と買い手の関わりを深める好機である。極端な高値が続けば、冷凍や輸入への転換が進みかねない。持続可能な農業へ、関係者全員が対等に受益者となれる方策を探りたい。