[論説]梅雨時期の猛暑 熱中症対策の徹底必ず
気象庁によると、16日は全国的に厳しい暑さとなり、35度以上の猛暑日となる地点が続出した。17日も猛暑日となる地域が相次ぐことが見込まれている。今週は高温で湿度が高い状況が続く見通しで、熱中症への警戒が欠かせない。熱中症による死者は月別で7、8月が圧倒的に多いが、暑さへの耐性ができていない6月に異例の暑さとなるだけに、厳重な警戒が必要だ。
農業現場では、熱中症による死者は圧倒的に高齢者が多い。農水省によると2023年までの10年間で、死者は計280人を記録した。年代別の内訳は、80代が135人と半分を占め、60代以上は全体の約9割に上る。月別では7月が最多の116人で、次いで8月は115人となった。ただ、死者は3~6月にも出ており、梅干しや経口補水液など、農作業の合間にこまめに摂取してほしい。
今季は既に農家が亡くなった。愛知県の豊田市消防本部などによると5月20日、同市の80代男性が熱中症の疑いで病院に搬送され、死亡が確認された。ビニールハウス内で意識がもうろうとしている状態で発見された。県によると、熱中症の疑いで死者が出たのは県内では今季初という。
農作業安全に詳しい富山県南砺市の片山安心コンサルタント合同会社の片山昌作代表は「今より気温が低かった若い頃の感覚で作業をし、重大な事故を招いている」と指摘する。熱中症は予防を徹底することで発症リスクをゼロにできる。代表的な症状は、①汗をかかない②体が熱い③目まい④吐き気などで、作業量で判断せず、その日の湿度や気温、体調に応じ40分作業したら10分休むよう助言する。
農水省は5~7月を「熱中症対策研修実施強化期間」とし、重点的に研修を進める。6月からは従業員を雇う全ての法人などで熱中症対策が義務化された。暑さ指数28以上か、気温31度以上の作業場で連続して1時間以上または1日4時間を超える作業が対象となる。作業場からの離脱や体の冷却、緊急連絡網など必要な手順の作成や周知が求められる。経営者が対策を怠った場合は、6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される。1人でも雇えば労災保険に加入すべきだ。
熱中症は対策を取れば防げる。高温多湿下での長時間労働は厳禁。安全最優先で大切な命を守ろう。