[論説]生・消で米価認識に差 再生産できる施策急げ
全国18紙と日本農業新聞が実施した、米の「適正価格」についての合同アンケートによると、消費者の立場からの回答で最多は5キロ当たり「2000円~2500円未満」。一方、生産者の立場からは「3500円~4000円未満」が最多で、認識の差が浮き彫りになった。アンケートは5月、LINEなどを通じて7110人が回答した。無作為抽出の世論調査とは異なるが、一定層の認識と受け止めていいだろう。
2000円台を求めた人は、「家計に無理がない価格」と経済的理由を挙げる傾向があった。小泉進次郎農相が随意契約での政府備蓄米放出を始めて以降、一部店舗で2000円前後の備蓄米が並ぶようになった。物価高騰の中、値下げを歓迎する声も多い。
備蓄米の追加放出を決めた小泉農相は、米価の一層の引き下げへ、需給を「じゃぶじゃぶにしていかなきゃいけない」と主張した。だが、生産現場からは現在の備蓄米価格が2025年産米の価格に影響を与え、再生産価格の確保が難しくなるのではないかとの懸念が強い。
肥料や農薬、燃料代など米作りに欠かせない資材の高騰が続き、稲作経営は依然厳しい。アンケートで3000円台を求めた人は「今までが安過ぎた」「中規模農家にとっての再生産価格」と話す。
小泉農相が考える需給が「じゃぶじゃぶ」になった場合、意欲を持って米作りに励むことができる再生産価格をどう確保するのか。実効策を早急に示してほしい。
また、「国が生産者の所得を支援する農業政策」の是非について尋ねたところ、9割が「必要」と回答。「5、10年後の米の安定供給」を「不安」に感じる人も9割に上った。回答した9割は消費者で、米を買って食べる立場からも、生産者支援が必要と考えていた。生産者、消費者ともに求めているのは価格の乱高下ではなく、安定だ。政府は政策で応えてほしい。
石破茂首相は、米農家の所得補償に前向きな姿勢を示している。27年度からの水田政策の見直しに向け、政府は米政策を議論する関係閣僚会議(議長=石破首相)を発足させ、米農家の経営安定対策などの検討を始めた。
消費者の米離れを防ぐだけでなく農家をどう支え、主食の米を安定的に供給していくのか。具体策を示すべきだ。