[論説]全国イチゴ選手権続々 レベル向上 部会単位で
おいしいイチゴは、生産者の技術力の高さと、品種の潜在能力の掛け算で生まれる。2月は日本野菜ソムリエ協会が主催する「全国いちご選手権」や、大手産直サイト「食べチョク」の運営会社が主催する「いちごグランプリ」が相次いで開かれ、入賞した都道府県や品種の名は、消費者にも強い印象を与えている。
3年連続で全国いちご選手権で最高金賞を受賞したのが「あまりん」だ。甘さが際立ち、酸味が少ないのが特徴で、広く好まれている。目指すべきイチゴの一つの到達点を示していると言える。
同じ埼玉県育成の「べにたま」も存在感を高める。コンテストでは農園単位の応募が多い中、同県加須市のJAほくさい北川辺いちご部は「べにたま」で今年、最高金賞に次ぐ金賞を獲得した。JA担当者によると、市場出荷している規格品から出品したという。上位入賞は部会のレベルの高さを証明するもので、メンバー8人は出荷ごとに自主的に目ぞろえをして品質を厳しくチェック。現場の巡回も年2回から月1回に増やし、育種した県職員を招いて栽培法を確認する。今季は、東京都内で高価格帯での販売が実現。大玉の平パックと、2段詰めパックに対応し、消費の裾野を広げている。農園単位から部会単位の受賞により、地域のイチゴ生産は強くなる。こうした動きを広げたい。
今後は、果皮や果肉が硬く熟度を高めても輸送傷みが出にくく、市場向けでも食味の良いものを出せるかが鍵となる。栃木県育成の「とちあいか」や種苗会社の育成品種も入賞リストに名を連ねており、「熟度を高められる」品種を選んで栽培することもポイントになりそうだ。
店頭では、イチゴの甘さと酸味のバランス、硬さなど品種ごとの違いをチャートで表示して販売する手法も出てきた。コンテスト出品で、各産地が品種の知名度を高め合うきっかけとなれば、消費者の関心は高まり、選択肢も広がる。多様なニーズに応えられる品をそろえれば、世界一のイチゴ王国として、海外市場も目指せるだろう。衝撃吸収で輸送中の傷みを防ぐ梱包(こんぽう)資材の進化で、輸送可能な範囲は広がる。
コンテスト出品を、各地のイチゴのおいしさや大きさ、美しさを国内外に発信する好機として捉え、産地全体でレベルアップを目指そう。