[論説]多様な人材の育成 若者の挑戦を支えよう
総務省の2024年労働力調査によると、農業・林業の就業者数は180万人と統計を取り始めた1953年以来、過去最少となった。高齢化による離農などで農業・林業の就業者は減少が続き、53年の1割にまで落ち込んだ。
そうした危機的状況を打開するために、期待されるのが全国各地の農業大学校だ。農業高校などからの進学組だけでなく、就農を目指す社会人も通っており人材は多彩だ。全国農業大学校協議会が開いた24年度全国農業大学校等プロジェクト発表会・意見発表会でも、ユニークな発想が発表された。
自らのビジョンを実現しようと「桃農家になって直売所とカフェを併設するため、小規模での高品質栽培を目指す」など、具体的な技術や経営内容に言及。地域全体の活性化に向けて「放置された桑の葉を乳牛の飼料にし、新たな商品開発と桑園再生につなげたい」との構想も披露した。
若者の柔軟なアイデアを「無理に決まっている」「これまでも、こうしてきたから」などと既存の価値観にあてはめて否定するのではなく、尊重したい。多様な経営像は斬新な半面、実現できるかどうか不透明な部分があるかもしれない。それでも「やってみなはれ」の精神で周囲は見守り、支えていくことが人材の定着につながる。
時には経済的なサポートや指導、助言も必要になるだろう。地域の農家は、自身が培ってきた経験を、行政やJAなどは各種支援制度や先進事例を共有し、夢の実現に何が必要か、どうすれば農業経営を安定させることができるか、上から目線ではなく「一緒になって考える」というスタンスを持ちたい。
懸念もある。自立前に農業法人などで経験を積むケースも多いが、農水省は、49歳以下の人材を新たに雇った農業法人や農家に、雇用人数に応じて交付金を支給する25年度からの「雇用就農資金」事業の一部で人数制限を設ける。これまで新規雇用1人につき、年間最大60万円を最長4年間支給してきたが、「年間5人」に制限。3人目以降は最大20万円に減らす。
一方、同省は正規雇用に向けて試用期間を設けて人材を雇う法人や農家に対し、新たな支援も予定する。就農の門戸は広ければ広いほどいい。就農機会を狭めることのないようにしてほしい。