[論説]地域計画の策定大詰め 人と農地確保へ全力を
農水省が2024年11月末時点でまとめた地域計画の策定状況によると、完成できたのは960地区。策定が必要な全2万1299地区のうち、期限まで4カ月を残したタイミングで5%にとどまる。ただ、目標地図の素案を作成したのは1万3348地区と63%に増えており、同省は「完成一歩手前の地区は多い」とみる。
最後の追い込みが期待されるが、一方で期限を意識し過ぎて、形だけ整えるようなことがあってはならない。同省は、できる限りのことをした上で協議を継続し、完成度を高めるよう呼びかける。期限の3月末で終わりとせず、来年度以降もよりよい地域計画の策定に向けて、作り直していくことが求められる。
もう一つの懸念は、補助事業へのひも付けだ。同省は農地や担い手に関わる補助事業について、地域計画に位置付けられていることを採択の要件にする。地域計画の策定と実践を促す効果は一定に理解するが、事業の採択を受けるために地域計画を策定するようになっては本末転倒であり、形骸化を助長しかねない。話し合いを尽くし、内容がしっかりした地域計画にしていくことが何より重要だ。
今、地域計画を策定する意味を改めて考えたい。基幹的農業従事者の数は全国でこの20年間に半減し、同省はさらに今後20年で4分の1の30万人まで減ると試算する。単純計算で、農業者が4人の集落なら、20年後は1人だけになってしまう。手を打つのは待ったなしであり、それぞれの地域で、農地を担う人の問題がどうなるか、農地をどう守るか、対応を話し合い、準備するのが地域計画だ。後継者の確保や組織化などの対策も打ちたい。
安定した農業所得の確保も大きな課題となる。そのためには地域計画に作物振興の方針を重ねていくことが重要で、市町村とJAなどとの一層の連携を期待したい。
今の農政改革も所得への影響が大きい。再生産可能な適正価格を実現できるか、今国会に提出予定の改正法案の実効性が問われる。米・水田政策の見直しも浮上した。所得や農地利用への影響は現時点で見通しにくく、今後の制度設計次第だ。生産現場は、地域計画の策定・実践を通じて人と農地を守ろうと動いている。その現場の努力を、農政は支えていく必要がある。