[論説]有機自治体の拡大 学校給食から始めよう
大雪や異常高温など極端な気候変動は、農作物の減収や品質低下、作業環境の悪化など農業に悪影響を与えており、環境負荷をかけない農業への転換は待ったなしだ。輸入依存を減らし、足元の資源を大事にするオーガニックビレッジの重要性は増している。
ビレッジを宣言した市町村には、初年度に「みどりの食料システム戦略推進交付金」の1000万円が給付される。交付金は有機栽培の技術や流通の合理化、施設整備などに活用できる。同省は2025年までに100市町村、30年に200市町村に増やす目標を掲げている。25年度予算案では、ビレッジに認定された市町村が、有機農産物の消費拡大などを目的に他の市町村と連携した際には、交付金を年間200万円増額する措置を盛り込んだ。
注目したいのは学校給食での利用で、9割の市町村が取り組んでいる。給食の時間を活用した食育活動により、給食の食材を通して地域の農業や環境に関心を持つ子どもが増えることが期待できる。これを市民に広げたい。食育を通して、適正な価格転嫁への理解につなげることが大切だ。
給食は、有機農家を支える仕組みとしても有効といえる。適正価格や供給先の確保が実現でき、農業経営の安定化を見込む。大阪府泉大津市と共同でオーガニックビレッジ宣言をした北海道旭川市では栽培した有機米を、泉大津市内の小・中学校の給食に提供している。旭川市は、年間で米20トンの販路を確保した。
根底にあるのが、信頼関係の構築だ。東海農政局が初めて開いた有機農業に関するフォーラムでは「学校給食は、自治体や学校給食の担当者と地域農家の信頼関係があれば、必ずしも有機JAS認証は必要ない」との声も上がった。
課題もある。学校給食は保護者が食材費を支払い、自治体の予算も限られている。自民、公明、日本維新の会の3党は26年度に小学校の給食無償化実現で合意したが、中学校を含め早急な実現を求めたい。有機と慣行農業で、地域が分断されることがないよう留意する必要もある。環境に配慮した農業への転換を促すのが狙いであり、慣行農業が否定されることがあってはならない。理解醸成には時間がかかる。国による息の長い支援を求めたい。