[論説]国際協同組合年が始動 価値と役割広める好機
2月、日本の実行委員会などが東京都内で開いたアジア太平洋地域のキックオフイベントには29カ国、114団体の協同組合関係者が参加し、国際年の始動を宣言した。「協同組合はよりよい世界を築きます」という統一テーマを確認し、活動への理解促進や連携強化を誓い合った。
イベントで注目されたのは国連の期待の高さだ。グテーレス事務総長は、食料安全保障など世界が直面する課題に触れ、持続可能な開発目標(SDGs)への協同組合の貢献を高く評価。「社会的連帯経済」を推進する国連の国際労働機関(ILO)は、「協同組合の認知度を高めるチャンス」だとした。
一方、日本国内の課題は、その認知度だ。延べ1億人を超す人々がJA、生協、森林組合、漁協、労働金庫、信用金庫などの協同組合に加入し、さまざまな事業を利用するが、この国際年を知っている人はどれほどいるだろう。もっと言えば、事業は利用するが、協同組合の成り立ちや理念まで理解している人はまだ多くないのではないか。
日本協同組合連携機構(JCA)が、IYCを好機と捉え、協同組合の理解促進と認知度向上に向け、「学び」「実践し」「発信する」ことを呼びかけているのは、そうした危機感の表れだ。県域での取り組みも広がる。協同組合ネットいばらきは、学習会や交流会を企画。島根県協同組合連絡協議会は、ドイツ、フィンランドへの海外研修、島根大学での寄付講座などを予定している。
政府、国会もこの機会を逃してはならない。国連は各国政府に協同組合への支援を促している。石破茂首相は、先のキックオフイベントで、地方創生など新しい国づくりに向け、「協同組合が大きな推進力になる」とのメッセージを寄せたが、具体的な支援策が問われている。また、協同組合振興研究議員連盟の森山裕会長(自民党幹事長)は、協同組合を振興する国会決議に意欲を見せており、ぜひ超党派での実現を求めたい。
国際年を一過性のイベントで終わらせてはならない。JAグループは、協同組合の今日的意義を学習で掘り下げ、地道な実践を通じて国民の支持と理解を広げていこう。より良い世界を築くことは、単なるお題目ではない。協同組合関係者に課せられた重い使命でもある。