[論説]協力隊とJAの連携 まず対話から始めよう
本紙は、現役の協力隊員と元隊員の計101人に、農業やJAに対するアンケートを行った。結果、JAと関わりのない隊員は7割に上ったが、6割はJAと関わりたい、9割以上は農家と関わりたいと答えた。隊員は、生産現場とのつながりを求めていることがうかがえ、JAと連携できる可能性は大いにある。新たな仲間として協力隊を意識し、交流の機会を設けて対話を重ねてほしい。
総務省によると、2023年度の協力隊員数は前年度比753人増の7200人。23年3月末までに任期を終えた隊員数は累計1万1123人と1万人を突破。活動した地域で定住した隊員のうち1割が就農し、協力隊は就農のルートとして定着している。
だが、残念なのはJAと、農業や地域の担い手として有望な隊員との関わりが少ない点だ。任期後に就農を選ばなくても、地域の観光やデジタル分野、農産加工などで活躍するケースは多く、柔軟な発想や行動からヒントを得ることは多いだろう。対話を通してJAの応援団になってもらえる可能性もある。隊員の中には「JAが何をしている組織か知らない」という声もあり、農家と食卓をつなぐJAにとって、貴重なチャンスを逃しているといえる。
調査では、隊員の8割が「日本の農業に可能性を感じる」と回答したことにも注目したい。高齢化で耕作放棄地は増え、担い手不足など課題が山積する農業だが、若くて新しい発想を持つ協力隊にとっては魅力的に映っている。農業を前向きに捉える若者の感性に、JAや生産現場が学べる点は多いはずだ。
大正大学教授を務めた故・浦崎太郎氏は、地域おこしについて「地域の大人が、よそ者・若者・ばか者と共に挑戦する覚悟を持てるかどうかにかかっている」と指摘した。
外部からやってきた協力隊の存在を「農業を知らないくせに」などと違いを排除するのではなく、接点を持ち対話の機会をつくることが重要だ。協力隊は地域の自治体が採用や活動に関わっている。自治体に相談し、地域の課題や農業の活性化策など、隊員とざっくばらんに話し合うことから始めてみてはどうか。
過剰な期待は禁物だが、結果をすぐに求めず、隊員の力を生かしたい。足元の宝に気付ける隊員の存在こそ、農山村やJAを活性化させる。