[論説]食育基本法20年 農業と教育連携さらに
食育基本法が公布され6月で20年。食育とは、農業体験などを通じて食への知識と、バランスの良い食を選ぶ力を身に付け、健全な食生活を実践する力を育むこと。同法は食育施策を計画的に進め、家庭や学校、地域を中心とした国民運動に発展させることを目的としている。
第4次食育推進基本計画(21~25年度)は、数値目標を24項目設けたが、計画を作成した20年より数値が悪化したのは、食育の関心度や青果物の摂取量など16項目で約7割に上り、食育推進の難しさが浮き彫りとなった。今月下旬からは第5次基本計画の検討が始まる。現状を分析し、目標達成へ実効性ある計画策定を求めたい。
白書を通し体験活動の課題も見えてきた。「農林漁業体験を経験した国民の割合」は24年度が57・0%と、ここ4年で8・7ポイント下がり、食育にかかわる団体で活動する人も30・5万人と同5・7万人減った。1次産業に関わる人が減り高齢化が進む中では限界がある。「一体、誰が食と農業の現状を伝えるのか」と疑問を持つ農家も少なくない。
注目したいのは、自民党食育調査会が3日に発表した次期食育基本計画に向けた提言だ。家庭の経済状況などにかかわらず、全ての児童・生徒が農林漁業の現場を学べる仕組みづくりを要望、そのためには教育関係者と農林漁業関係者の連携が必要と指摘した。この機会に、教科書だけではなく農業の体験学習を義務付けてもらいたい。農業理解が進めば、国産の農畜産物を価格だけではなく「価値」を大切にする機運が高まろう。
学校とJAのつながりを強め、「地域農業・教育連携モデル」を創出してほしい。
白書の特集でも、教育現場との連携が目立つ。JA東京中央会は、小・中学校の職員向けに「畑の見学会」を開くほか、若手生産者による生徒への「出前授業」も展開する。
岐阜県のJAにしみの女性部は「ふるさと隊」を結成し、管内の学校で大豆の栽培、収穫、加工までの包括的な食農教育を実践。教える隊員の研修も行い、持続的な活動を目指している。教育を軸にJAとの連携を強化してほしい。
「令和の米騒動」を機に国民の農業への関心は高まっている。国、自治体、JAが連携し、食育に携わることが農業理解への一歩となる。