[論説]ミカン初の60万トン割れ 規格外の価値見直そう
ミカンは、国内の果樹の中で結果樹面積が最も大きい。だが、24年産の生産量は前年産比18%減の55万9600トンと過去最低になった。農家の高齢化などで結果樹面積は右肩下がり。農水省は予想生産量の段階で高温対策を前提に70万2000トンと見込んでいたが、異常高温が長期化し、大幅減となった。
同省が4月に公表した、今後5年間を見据えた新たな果樹農業振興基本方針で、ミカンの30年度の生産数量目標は、23年度比1%減の67万5000トン。大幅な減産となった24年産と比べると相当な上積みが必要となる。同方針は果樹全体の単位収量を、23年度と比べて30年度は6%増やす目標を掲げる。増産は、省力樹形の導入の加速と、高温対策が重要な鍵となる。
担い手確保の目標も掲げた。トレーニングファームの設置を増やすことで新規参入者を30年度に倍増させる計画を描く。JAなど現場を巻き込んだ人材育成を進めたい。JAえひめ南は24年度から「みかん学校」を設置、3人(今年3月末時点)が就農した。園地は急傾斜地が多く、運搬が楽になる作業道の設置も研修内容に組み込んだ。
こうした目標を達成するには、果樹農家が暮らしていける所得の確保が大前提だ。そのためには、気候変動の影響で生じる規格外果の価値を底上げする必要がある。
今月成立した、農畜産物の適正な価格形成に向けた関連法は、全品目の売り手と買い手に価格交渉へ誠実に臨む努力義務を課す。同法案の審議過程で小泉進次郎農相は、規格外野菜の取引でも生産費を考慮した価格形成が必要だと提起した。果実の規格外品も含め、家族で果樹経営を続けていける価格水準を求めていくべきだ。
民間も動く。規格外品の価値を見直す機会を作ろうと、産直サイト「食べチョク」は4月、都内で規格外品を対象としたマルシェを開いた。中晩かんの「はるみ」の正規品と規格外品を来場者に試食してもらい、どちらが好みの味か尋ねたところ、味への評価はほぼ同じだった。味に差がないのであれば、多少見た目が劣っても、価格をもっと底上げできる可能性はある。
「訳ありだから値下げは当然」ではなく、「味は変わらないのだから、農家を支えるために対価を払う」という消費者を増やす必要がある。