[論説]風通しの良いJA くみ上げよう 多様な声
少子高齢化や都市への人口流出、県庁や市町村職員との競合などで、年々JA職員の確保は難しくなっている。JA全中の調べでは、2019年に約15万6000人いたJAの正職員は、23年には約14万人まで減少した。新採用職員を十分に確保できないJAは多く、このままでは次代を担う人材は育たなくなる。
こうした状態を解消するため、各地のJAではさまざまな模索が始まっている。滋賀県のJAこうかは一度、退職した職員が再度JAに復帰できる「カムバック制度」を新設。23年に採用条件を変更し、結婚や妊娠、介護などに加え、自己都合による退職者も対象とした。
なによりJAで働く職員が、農家組合員の営みを支える大切な仕事をしていることに誇りを抱いているかが大切だ。JAは営農や販売、渉外、介護、暮らし、葬儀など組合員らをあらゆる角度からサポートする。これほど多彩な経験を積める仕事はそうないだろう。利用者、組合員にとって頼れる人材を育成することがJAへの信頼につながる。
第30回JA全国大会の決議ではJAの組織基盤・経営基盤の強化に向けて「役職員の力が重要」と提起。「多様な職員が働きやすい、働きたいと感じる職場づくりに取り組む」ことを掲げた。
JAみえきたは、階層別の意見交換会に取り組む。組合長を座長に性別や年代にとらわれず、どの職員も遠慮なく意見を交わせることを重視。同時に、埋もれがちだった女性や若手職員の声をくみ上げることを目的とした。職員からはライフステージに応じた働き方や、組合員の需要に応じたビジネスモデルの構築など多様なアイデアが出た。
「目安箱」を設けたのはJAさいたまだ。女性職員の一声で今年度から始まった取り組みで、職員向けに創刊した情報紙に目安箱のコーナーを設けた。専用のQRコードを付け、匿名で経営層への要望を投稿できる。既に職員からは本店の休憩室の拡充や、雇用形態で差がある名札の改善、直売所の職員割引を使いやすくする専用カードの創設といった多彩な要望や改善案が出ているという。こうした意見をJAの運営に反映することで「私たちの組織」という愛着が芽生えるはずだ。
年齢や性別、役職、雇用形態を問わず、多様な声に耳を傾け、改善につなげることが風通しの良い職場をつくる。