[論説]「BS資材」ガイドライン 安全確保へ議論深めよ
BS資材は、直訳すると「生物刺激剤」。農作物や土壌に施すことで、作物が持っている機能を引き出し、結果として農作物の品質や収量向上などの効果が期待できる資材を指す。欧米で活用が進み、先行する欧州連合(EU)は「BS資材は農薬に該当しない」と規定し、新肥料法の中に位置づけている。
国内でも市場拡大が見込まれており、同省が2021年に策定した「みどりの食料システム戦略」では、BS資材の活用が盛り込まれた。海藻抽出物や腐植酸、菌根菌などの微生物をベースとした資材が国内で販売され、日本バイオスティミュラント協議会によると、23年の国内向け出荷額は約57億2500万円に上っている。
産地から注目されているのが、高温などの環境ストレス耐性が向上するBS資材だ。静岡県のJA遠州中央耕種部会は、水稲の高温対策としてBS資材を使った実証試験を始めた。出穂期の不稔(ふねん)や白未熟粒の発生を抑え、米の品質向上や収量増を期待する。同JAでは部会員104人に資材を提供した。
愛知県のJAひまわりも本年度から、BS資材の実証試験をスプレイ菊やバラ、トマト、ミニトマト、イチゴ、アスパラガス、ナス、水稲などの11品目に広げた。昨年度の試験で生育促進など一定の効果が見られたことから、減肥につながると期待する。
現場での広がりを受け、同省はBS資材の表示にかかわるガイドラインを策定。資材の定義や効果、使用や表示のルール、安全性の確認方法などを整理、使用者からの問い合わせを受け付ける体制整備なども求めた。今後、ガイドラインを周知する方針だ。
一方、現場からは「効果や使い方が分からない」「農薬との違いが分かりにくい」「安全性に不安がある」といった声も上がっている。
求めたいのは、安全で安定した効果が見込め、誤解を生まない表示制度だ。農作物は直接、口に入るため、安全性の担保は欠かせない。だがガイドラインに法的拘束力はなく、違反事例や紛らわしい表現をどう取り締まるかが課題となる。また、有機農業にBS資材が使えるのか、有機JAS規格に適合しているかどうかの表示もほしい。
地球環境に配慮した持続可能な農業へ、官民挙げて議論を深めていく必要がある。