先を見通せる縁起物として知られる、正月用食材のレンコン。生産量日本一を誇る茨城県土浦市で12月、収穫最盛期を迎え農家が作業に追われていた。
収穫作業は早朝から始まり、午前中で終える。収穫されたばかりのレンコンが朝日に照らされ、輝いていた(茨城県土浦市で)
「外より水の中の方があったかい」
日の出前の午前6時、氷点下3度の気温の中、ウエットスーツを着た農家の野口重典さん(42)が胸まで田んぼ(レンコン田)に入って白い息を吐く。
水面にうっすらと氷が張ったレンコン田は深さ60センチほどだが、手探りでレンコンを探すため膝をついて作業する。ポンプでくみ上げた地下水で泥をどかしながら掘り進め、引き抜いていく。
胸まで泥に漬かり手探りでレンコンを探す野口さん。「土に埋まって見えないレンコンを収穫するのは熟練の技が必要」と話す(茨城県土浦市で)
収穫したレンコンは大きいもので1メートルを超す。10ヘクタールで栽培する野口さんのレンコンは、肌つやと形がよく、甘みが強いのが自慢だ。収穫は7月下旬から始まり、5月末まで続くが、野口さんはハウス栽培も40アール手がけ、周年で出荷している。
今年の苦労を聞くと、「今年は夏場の害虫の影響で約30アール分のレンコンがダメになった」と悔しそうに話していた。
取れたばかりのレンコンの断面
軽トラには専用の小型クレーンを装備。収穫した重いレンコンを運ぶことができる
JA水郷つくばレンコンセンターには午前7時ごろ、農家から収穫されたばかりのレンコンが続々と運び込まれる。最盛期の今は1日10トン以上にもなるという。
同市がある霞ヶ浦(かすみがうら)湖畔一帯は水害が多いため水稲栽培に適さない。また、1970年頃から国の政策で、米からレンコンに転作する農家が増え一大産地を築いた。現在、JA管内では約350人の生産者が約900ヘクタールでレンコンを栽培。今年度は8200トンの出荷を見込む。
昼頃になると洗浄待ちのレンコンがずらりと並ぶ(茨城県土浦市で)
最盛期になると約50名が洗浄、選別の作業にあたる(茨城県土浦市で)
レンコンセンターでは乾燥を嫌うレンコンが乾かないように常にミストをあてている
同JAれんこん課の小神野照章課長は、「茨城県産のレンコンを食べて幸先のいい新年を迎えてほしい」と話す。
(山田凌)
一面に広がるレンコン田。5月まで出荷が続く(茨城県土浦市で)