2024年元日の能登半島地震や9月の豪雨で、甚大な被害を受けた石川県輪島市の白米千枚田。世界農業遺産「能登の里山里海」のシンボルとなっていた棚田は、用水路が壊れ、あぜや田には無数の亀裂が今も残る。震災発生から1年間、棚田に関わる人たちの奮闘をカメラで追った。
1月30日
地震であぜや田面、通路に無数の亀裂が入った。地表以外の目に見えない亀裂のため、水がたまらなかった
地元有志らでつくる白米千枚田愛耕会は2月、「先人が守りつないできた能登の財産を復活させたい」と、避難生活のさなかに、クラウドファンディングで修復費用を募った。
急ピッチで被害の少ない田を復旧。5月、全国のオーナーらに呼び掛け120枚で田植えをした。規模は小さいが、例年のように水面に並んだ稲は、メンバーを勇気づけた。
5月11日
田植えをするオーナーら
夏の炎天下、ボランティアの力を借りながら復旧作業や草刈りを継続。9月には、黄金色の稲穂が海風に揺れる光景を見ることができ、約1・3トンを収穫した。
8月10日
夏の白米千枚田。ボランティアが修復作業に励んでいた
8月10日
白米千枚田に観光で訪れて被災した若者が、恩返しのボランティアに戻った。炎天下、約20枚のあぜを修復した
9月7日
稲刈りでは愛耕会メンバーがボランティアらにコツを教えた
9月7日
収穫を楽しむボランティアら。予想より豊作だった
収穫後、修復を本格化させようとした矢先の9月21日、豪雨の追い打ちに遭う。用水路が再び壊れ、あぜが大きく崩れた。棚田の上部は地すべりが発生し、今も崩れたままだ。
9月25日
豪雨で崩落したのり面。脱穀機が通れるように、愛耕会のメンバーが土砂や石をどけた
同会は12月、取れた米の試食会を開き、この一年の努力をかみしめた。
12月19日
今年穫れた米を試食する愛耕会のメンバー。15人中6人は金沢市などから集まった(白米千枚田愛耕会提供)
同会は今年、震災を転機と捉え、化学肥料と農薬を使わない栽培方法に挑むと決めた。千枚田の価値を高め、手作業による伝統農法を残す狙いがある。
白尾友一代表(61)は「日本一非効率な棚田で、ますます非効率を極める」と力を込める。
(鴻田寛之)
12月20日
豪雨で地滑りした山肌越しに朝日が昇る。上の田には、流れ込んだ土砂や流木が残る