徳島県勝浦町で、貯蔵ミカン「勝浦熟成みかん」がじっくりと甘味を蓄えている。2月の出荷を前に、生産農家は品質管理に余念がない。
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「ひんやりとしとるでしょう。天然の冷蔵庫みたいなもんです」
同町の農家、花岡陽介さん(41)が、約20トンを熟成させる貯蔵庫の1部屋を見せてくれた。
貯蔵庫内の室温は5度。湿度は約80%。山間部の急斜面に広がる園地内にある。庫内はせいろと呼ばれる専用の木箱約200箱が人の背丈よりも高く収納されていて、ここで2~3カ月かけて甘味を引き出す。
貯蔵しているミカンを手作業で確認する花岡さん。出荷まで残りわずかとなり、カビのまん延には細心の注意を払っている(徳島県勝浦町で)
庫内の壁は土壁で、湿度を調整する役割を果たす。床下と天井には風道(ふうどう)と呼ばれる換気口があり、新鮮な風と適度な水分を常に取り込み、熟成に適した温度を保てるという。
貯蔵庫内に置かれた湿温度計。天候を見ながら空気を循環させ、最適な温湿度を保つ
花岡さんは約2ヘクタールで貯蔵に適した品種「古田」をメインに栽培。昨年、11月下旬から収穫を始め年末までに終えた。熟成したミカンはクエン酸が分解され、酸味がとれ濃厚な味わいになる。出荷は2月上旬から始まり、3月中旬まで。他産地のミカンが手に入りにくい2月中旬に最盛期となるように調整し、高単価をねらう。
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花岡さんによると、今年は、着花不良とカメムシの影響で例年に比べて、2~3割ほど収量が減少。この10年で気候変動や鳥獣被害により、栽培が難しくなっているという。
JA東とくしま管内では約200人が熟成ミカンを生産。全国の市場に約500トンを出荷する見込み。
JA生比奈選果場担当の堺啓輔さん(35)は「例年に比べ数は少ないが、味は上々。甘味が引き立つ極上のミカンを味わってほしい」と話す。
(山田凌)
山一面に広がるミカンの木。急傾斜地にある園地では収穫したミカンなどを運ぶために欠かせないモノレールのレールが張り巡らされている
町内にある和菓子店、前松堂の「勝浦みかん大福」。地元産のミカンを使用しジューシーに仕上げた一品