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「冬になると地区のあちこちの家で大根を乾かす作業をしていたが、今じゃほとんど見れん」とつぶやくのは生産農家の河内宏文さん(69)。農閑期の貴重な収入源として、盛んに生産されていたが、高齢化などで減少した。真冬に重いダイコンを収穫して運び、水で洗う作業は、寒く特にきついという。河内さんは14アールで寒干し用のダイコンを栽培。品種は「白太郎」と「令白」の2種類。加工に適し、きめ細やかで干すとうまみが凝縮する品種だ。長さは大きいもので約60センチにもなる。

今年は天候不順の影響でダイコンの生育が悪かった。丸みが少なく、干すのに必要な長さが足りていないものが多いため、例年に比べ生産量は半分ほどになる見込みだ。
ダイコンは収穫して2~3日置き、皮を厚くむく。縦に4~6等分に割って、2週間ほど天日干しして芯まで乾かす。乾燥を終えたら水にくぐらせ、木製の道具でもみ、細く形を整え仕上げる。
寒干しに適した気温は約10度。高温多湿だとカビが発生し、低温だと凍ってしまうため管理が難しい。
河内さんは「いつも天気予報とにらめっこ。3日先まで気にして動かないと良い商品は作れない」と話す。
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できた寒干大根は大阪に出荷、料亭などで使われる。本年度は約300束(1束10本)の出荷を予定する。関係者からの引き合いは強いが、担い手不足と気候の変化で生産が困難になり、生産量は年々減少しているのが現状だ。河内さんは「元気なうちは伝統の味を守っていきたい」と力を込める。(山田凌)

