
米の高騰が社会問題化する一方、農村では離農が相次ぐ現実があるーー。農繁期が迫る3月末、そんな危機を共有しようと農家や市民4500人とトラクター33台が結集し、「令和の百姓一揆」と題して東京都心をデモ行進した。同時多発で全国14都道府県で同様のデモが開かれた。
山形県長井市で稲作と養鶏を営む菅野芳秀さん(75)は「農民の時給はわずか。農民が消え、作物が消え、村が消えてしまう」との思いで昨年秋に実行委員代表になった。仲間と手弁当で準備し交流サイト(SNS)などで呼び掛けたところ賛同の輪が広がった。
集合場所となった青山公園(東京都港区)には園外にも人があふれた。デモ出発前の集会では長崎や茨城、千葉、広島などから参加した、トラクターを運転する農家全員があいさつ。「食べる人とつながりたい」などと声を張り上げた農家に、大きな拍手が湧いた。

農家たちの意見に、東京都世田谷区の消費者、鷹濱均さん(65)は「農業がないがしろにされ地方がほったらかしにされていた」、茨城県守谷市の中丸晴子さん(50)は「今までの米価が適正だったのか食べる側こそ考えなくてはいけない」と思いを強くした。
トラクターを先頭に1時間以上歩いた農家たち。奈良県五條市の果樹農家・稲田博子さん(63)は「都心の人に農業の現状を分かってもらいたい」と話した。デモの数日前に「これからの農業は、農家と市民の連携が必要だ」と北海道から航空券を急きょ手配した農家もいた。

参加者はそれぞれの思いを抱き、デモをSNSに投稿。「農は国防」「村なくして米なし」「NO LIFE NO RICE」「万人直耕」など農家の思いを込めたのぼり旗が一際、目立っていた。
(尾原浩子、藤平樹 撮影=甲田寛之、山田凌)
