愛媛県宇和島市遊子地区にある「遊子水荷浦の段畑」で4月中旬、早掘りジャガイモの収穫が最盛期を迎えた。農家は宇和海からの風を浴びながら、ジャガイモの収穫に汗を流していた。
「ブォォオン」
早朝、沖合にある養殖いかだの管理に向かう漁船の低いエンジン音が段畑一帯に響く。同地は、リアス式海岸の半島先端に位置し、タイや真珠などの養殖業が盛んな港町だ。

段畑は、平均勾配約40度の半島の急斜面を開墾してできた。2・5ヘクタールほどの広さに、約1000枚の畑が50段以上も広がるひな壇状の段々畑で、13戸の農家がジャガイモを栽培している。
小さな石を積み上げてできた畑は、幅約1・5メートル、長さが5~50メートルと細長い。石積の高さは1メートル以上あり、畑をスムーズに移動するにははしごを使う。その形状から定植や収穫などの作業を機械化できないため、高齢化と担い手不足で、耕作放棄地が増えている。鳥獣被害も多く、特にイノシシに手を焼いているという。

段畑で栽培するジャガイモは、地形を生かした日照時間の長さと温暖な気候、海からの潮風を受けて育つ。デンプン糖度が高く、甘くてホクホクとした味わいが特徴だ。
JAえひめ南バレイショ部会部会長の福島久光さん(74)は、「先祖代々が営農してきた大切な畑。苦労は多いが、体力が続く限り続けていきたい」と話す。

JA下波支所では、朝収穫したばかりのジャガイモを職員らが手作業で選果。今年は冬から春先にかけて天候不順の影響で、生育が遅く、収穫開始が例年に比べて、10日ほど遅れた。生産農家の減少で、収量は昨年の半量となる約8トンにとどまる見込みだ。
JA宇和島営農センターの是澤俊治センター長は「今年は小玉が多いが、出来は上々。甘味のあるおいしいジャガイモを食べてほしい」と話す。
(山田凌)