[あんぐる]実り祈り 光再び 中山千枚田「虫送り」(香川県小豆島町)
「やっとの開催だ」。同地で米を栽培する農家、弓木富王さん(71)は思わず顔をほころばせる。虫送りは新型コロナウイルスの影響で中止していたが、検温など、コロナ対策を実施し、3年ぶりの再開となった。
暑さが和らぎ始めた午後6時ごろ、同町の霊場で棚田が一望できる湯舟山に虫送りの参加者が集合。祈願を済ませた後、竹製の火手(ほて)と呼ばれるたいまつを手に出発した。
日が落ちた棚田では、うろこのような水田の輪郭が月明かりで浮かび上がる。その合間を、火手を手にした隊列がゆっくりと練り歩いていく。「とーもせ、ともせ」と声を上げながら、田んぼに火をかざし、終点となる神社を目指した。
棚田の面積は約12ヘクタール。標高150~250メートルの山の斜面に約790枚の田んぼが広がる。南北朝時代から江戸時代にかけて造られたと伝わり、農水省の「つなぐ棚田遺産」に選ばれている。
虫送りは約300年前から始まった。少子化などで途絶えたが、2010年に、同島での場面がある映画「八日目の蝉(せみ)」で、行事を再現したのをきっかけに、地元住民が復活させた。
主催した実行委員会の会長、井口平治さん(72)は「海外からの参加もあった。3年ぶりに開催できてうれしい限りです」と笑顔を見せた。(釜江紗英)
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