太陽光で稼働し断熱の層形成
後志管内仁木町で「けいら農園」を経営する計良友一さん(52)は、市販の小型送風機(ファン)を使って二重に張ったビニールの間に空気膜を作り、太陽光でビニールハウス内を加温する「空気膜ファン」を開発した。生シイタケの栽培やトマトの育苗などで活用し、燃油代の節約に成功。計良さんは「電源も小型のソーラーパネルで十分」と太鼓判を押す。
保温効果の高い空気の層を断熱材代わりにするダウンジャケットの特徴にヒントを得た。その上で「農業改良普及センターの技術を応用しながら、自分なりに工夫した」という。
まずビニール2枚をぴたりと重ね合わせて、ビニールハウスの天井部分を被覆する。次に、通信販売で購入した送風用の小型ファンを表面に設置。休まずファンを稼働させることによってビニールとビニールの間につくられた空気膜が、昼間の太陽光によって暖められ、徐々にその暖気がハウス内に広がっていくという手法だ。
また、自宅から離れているビニールハウスは、送電網につながっていないため、ファンの電源として市販の小型ソーラーパネルとバッテリー、インバーターを組み合わせて対応している。
計良さんは、ハウス約55棟で夏の間フルーツトマトやミニトマト、さらに冬場も生シイタケや寒締めホウレンソウを栽培する。
「空気膜ファン」は8年前に導入し、今年は8棟のハウスで稼働している。最も効果を上げているのが真冬の生シイタケ栽培だ。
従来の加温だと、ハウス1棟当たり1カ月1800リットルの灯油を消費する。これに対して「空気膜ファン」のハウスは半分の900リットルに節約できる。さらに、3月下旬からほぼ1カ月間にわたるトマトの育苗期間も、灯油代が「約3分の1で済む」という。
計良さんは実家の農園を継承するため2002年にUターンしたが、もともとはエンジン設計などを手がける技術者だった。
安価な材料を使って農業用設備を作ることが得意で、過去にも断熱材やコンパネ、発泡ウレタンなどを組み立て、市販のエアコンで冷却する「予冷庫」を10万円程度で製作。ミニトマトの追熟抑制などに大きな効果を上げている。
計良さんは「燃油を含め、農業資材全般の価格高騰が経営を圧迫している。その中で『空気膜ファン』が良い働きをしてくれ、ずいぶん助けられている」と笑顔で話す。(後志広域特別通信員・葛西信雄)