農家らの人手不足、移住者らの仕事 双方ニーズ把握し運営 好待遇で応募増 宮崎県日南市「ACにちなん事業協同組合」
「ACにちなん事業協同組合」は2022年11月に設立した。同市で「(株)ことろど」を経営する田鹿倫基代表が、どこの業種も人手不足の悩みを持つことから、知り合いの経営者らに声をかけた。働き手の職員は通常の派遣社員とは異なり正規雇用となるため、雇用環境が安定している。出資した事業所の組合員は、自社で雇用するより人件費や社会保障費、採用や教育にかかる負担が少なく、繁忙期などニーズに応じて来てもらえるという利点がある。
同組合の派遣利用料は月契約が1時間1200円など。スイートピーやイチゴなど農業関連、酒造会社、宿泊業者、飲食店などの19団体・企業が組合員で、職員は移住者を中心に採用する。昇給やボーナスも用意し副業も認める。
組合員の会社に就職した職員も複数人いるなど、運営は順調だ。田鹿代表は「組合員が、単なる派遣会社ではないという制度の趣旨を理解している。職員のキャリア形成も見据えた運営をすることが鍵の一つ」と考える。
「この働き方が好き」岡山から若者も
岡山市から移住して同組合で働く小室優花さん(30)は、カフェを開く目標に向け、地元のいろいろな人とつながりたいと考えた。「飽き性なのでこの働き方が好き。いろいろな働き方、経営者の考えを知ることができて勉強になる」と語る。
有機JAS認証を取得し茶340アールを栽培・製茶をする組合員の「井ケ田製茶北郷茶園」は草刈りなどを依頼する。田村かおる代表は「直接雇用に伴いがちなトラブルがなくありがたい仕組み」と話す。南いちご農園の南恭子さん(50)も「必要な時に手伝ってくれる。私が苦手なパソコンのことも教えてくれて助けられている」と歓迎する。
黒字経営の同組合。来年度からは現在8時間の勤務時間を柔軟にすることも視野に入れる。
同組合では、例えば「農業を中心に働きたい」などシフトや働く先は職員のニーズを考慮する。シフトを組んだり細やかなサポートをしたりする同組合の榎本朱里事務局長は、毎月職員と面談をして運営に反映させ、組合員の訪問も欠かさない。榎本事務局長は「19の組合員はどこも誇りを持って働いているから、自信を持って職員に紹介できる。組合員にも職員にも寄り添いたい」と話す。