西日本を中心とした16生協で構成し、組合員は約43万人のグリーンコープ共同体(福岡市)と大分県の耶馬渓酪農組合、下郷農協は、飼料生産から生乳生産、牛乳製造まで一貫して連携する産直体制を構築する。3者で会社を立ち上げ、大型牧場や牛乳工場を同県中津市下郷地区に新設。酪農業の振興と地域の雇用創造を目指す。
中心となるのは3月に稼働を予定する、年間700万本(1本1リットル)のびん入り牛乳を製造する工場と、1000頭の乳牛で年間乳量8030トンを生産する酪農場だ。隣接する日田市には、国産原料を使う飼料生産の拠点も設けた。
牛乳工場は全国的にびん牛乳の製造が縮小する中、組合員の需要が高いびん入り牛乳を自前の工場で作ろうと、グリーンコープが約50億円を投資する。
需要に合わせて生乳生産も拡大する。現在、同酪農組合の搾乳牛は140頭ほどだが、新農場は6倍に拡大。2026年6月に農場の供用を始め、約200頭から徐々に増やす。運営するのは酪農家とグリーンコープが協同出資する耶馬渓ファーム。代表の脇坂伸彦さんは、入植して3代目の酪農家だ。
同地区は戦後、長野県から開拓者が入植し、地域の生乳は下郷農協の工場で受け入れてきた。グリーンコープは09年から農協の野菜や肉類、乳製品などを扱い、地域再生プロジェクトを主導する。
3者は24年10月、国産原料比率を高めた完全混合飼料(TMR)を作るグリーンコープTMRセンターを稼働。11月中旬から提供を始め、やがては1000頭分、年1万5000トンを供給する。
デントコーンや発酵粗飼料(WCS)稲などもグリーンコープの契約農家が作り始めた。センターの飼料は約7割が国産か国内製造の食品副産物で、輸入に頼らない飼料を追及する。グリーンコープ生協連商品本部の斉藤隆本部長は「飼料生産に加え、コントラクター(農作業受託組織)事業もてがけたい」と展望する。
3者は住民や自治体などを交え、地域で協議を重ねる。この世に存在しないような人間的な産直関係を構築していく--23年10月に3者で締結した基本協定書にこう記した。酪農業を基幹に地域産業を興し、過疎化が進む同地区を「癒やしの里として豊かに再生していくこと」を目指す。
下郷農協の立花康久指導販売部長は「事業を通じて雇用が生まれ人が集まる。地域の活性化につなげたい」と期待。脇坂さんは「普通の牧場を作る感覚ではない面白さがある。多様な人が交流する新しい産直の形だ」と力を込める。
(柴田真希都)