[トレンド情報局]アニメとあがるコラボ 作品にも登場 若者に産地PR、広がる販路
お茶デザイン缶 売り上げ70万本超
静岡県沼津市の海辺の町を舞台に、女子高校生たちが「スクールアイドル」を目指す姿を描いた大人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」。国内外に多くのファンがおり、アニメに登場した実在のスポットを巡る聖地巡礼も盛んだ。
そんなファンらの熱い視線を集めるのが、アニメにも登場した「西浦みかん寿太郎」のオリジナルデザイン出荷箱や、茶娘に扮(ふん)したキャラクターをデザインした缶入り茶飲料「ぬまっちゃ」などの同地の特産品だ。
企画したのは地元のJAふじ伊豆なんすん地区本部。アニメの人気ぶりを産地振興につなげようと、職員や生産者らでプロジェクトチームを発足。2017年のオリジナルデザイン出荷箱を皮切りに、商品開発や、主人公の「西浦みかん大使」への任命など多彩なコラボを展開してきた。
農産物本来の品質の高さと、アニメ人気が相乗効果を発揮し、売り上げや販路が拡大。売り上げの一部を産地振興に充てる「ぬまっちゃ」は年間約70万本(21年度)を売り上げるヒット商品となっている。
プロジェクトに協力した西浦柑橘(かんきつ)出荷部会の矢岸正敏部会長は「若い世代へのアピールは、かんきつ産地共通の課題。将来のお客を獲得できたことは大きな成果」と手応えをつかむ。同JA地区営農課の榎本朋介課長補佐は「利益追求ではなく、産地振興を目的に、地域の他の企業などとも連携して取り組んだことが奏功した」と話す。
テーマ着目し販促 SNSで話題に
アニメのテーマに着目し、販促と結び付ける動きもある。
JA全農いわては、ご飯が大好きな主人公や、米をモチーフにした妖精などが登場し、子どもから絶大な人気を誇る「デリシャスパーティ●プリキュア」と、同県のブランド米「銀河のしずく」のコラボキャンペーンを展開。購入者を対象にしたアニメグッズなどのプレゼント企画を6月30日まで行い、アピールにつなげる。
北海道のよつ葉乳業は今春、農業高校を舞台にした人気漫画「銀の匙(さじ)」のオリジナルイラストをパッケージに描いた牛乳を数量限定で販売。交流サイト(SNS)などでも話題となり、「これまでつながりの薄かった層に北海道産のおいしさを知ってもらう良いきっかけになった」(同社)という。
■アニメや漫画を活用した地域振興に詳しい北海道大学観光学高等研究センターの山村高淑教授の話
人気アニメや漫画とのコラボは、農産物の付加価値を高める手法の一つとして期待できる。製作会社と連携し、農産物の描写をストーリーに盛り込んだり、「コラボカフェ」で農産物を使ったメニューを提供したりなど、作品のファンと農産物の接点をいかにつくれるかが重要だ。作品への愛情が深いファンは、作品との関わりがある農産物に対しても高い関心を持つ可能性がある。
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