オオカミロボ自動走行実証 獣害対策省力化へ 福井・仁愛大・東京大など(動画あり)
北海道の太田精器が製作するロボット「スーパーモンスターウルフ」は、赤外線で動物などを感知すると首を左右に振り、目を赤く光らせ、50種類以上の音を犬の鳴き声とほぼ同じ約90デシベルで発する。ロボットを載せる台車はガソリンで動く草刈り機を改造し、不整地でも長時間走れるようなタイヤを履かせている。
実証は、仁愛大学(福井県越前市)や県などが中山間地での獣害対策の省力化を目指して6年前に始め、今年は農業用ロボットを研究する東京大学も参画した。主導する仁愛大学の安彦智史准教授は、防護柵は維持管理の労力が課題になるとし、「人に慣れてしまった動物を少ない労力で山へ返す切り札がロボットの自動運転だ」と強調する。
実証に協力する今庄365スキー場の1カ所にロボットを置き、定点カメラで動物の出没状況やロボットへの反応をみている。さらに、11月から1カ月ほどは動物が出没する夜間に、スキー場内の1周約480メートルの通路を自動周回させて効果を確かめる。ロボットに付けた2つのGPSアンテナを使い、人工衛星との通信でロボットの稼働位置を細かく把握する。
ロボットは据え付け状態でも周囲約150メートルで害獣の追い払い効果があるといわれ、ロボットを動かすことで効果を高める狙いだ。
県内では、冬の越前海岸を彩る県花のスイセンで、鹿やイノシシによる食害が増え、農家が栽培を断念し、出荷本数は30年前の3分の1を切り、100万本以下となっている。海岸沿いに防護柵を設置しても、塩害で錆びるといった課題もあり、ロボットの活用を検討している。
安彦准教授は自動走行するロボットについて、「農家やJAから依頼があれば、収穫期だけでも貸し出して住民らの反応も聞きたい」と話す。