野生イノシシ対策 犬が活躍も アフリカ豚熱 国際会議から各国の防疫対策
シンポジウムは農研機構が、茨城県つくば市で10月中旬に開いた。これまでに47件が発生し、17万頭の豚を殺処分した韓国は、野生イノシシ対策を報告。2022年からは死んだイノシシを探すように訓練した犬を導入し、23年は延べ420頭を投入し70の死骸を発見した。韓国の国立野生動物疾病管理院の担当者は「人よりも早く効率的に見つけることができ、人件費削減につながる」と話した。
インドネシアは19年の初発生以降、複数の島にまたがる38州のうち30州に拡大した。防疫対策が全くない軒先での放し飼いも多く、野生イノシシがいない地域にも人や豚の移動(出荷)に伴い感染が広がった。年末年始に豚肉需要が高まるため、この時期にASFの発生が多い傾向があるという。
世界中で試験研究が進む予防ワクチンについての議論もあった。韓国の研究担当者は、遺伝的に弱毒化させたウイルスを利用する「生ワクチン」の実用化を目指していると紹介。接種試験の結果などを示し「安全性が高く、抑制効果も高い」と話した。ベトナムは23年に世界に先駆けてワクチンを実用化したと発表しているが、会議では同国内でのその普及具合や効果には言及しなかった。
パネルディスカッションでは特に、生ワクチンの安全性・有効性を議論した。「豚熱(CSF)では生ワクチンによる対策がうまく機能している」「ワクチンはASFをコントロールできるわけではない。農場の防疫レベルを高めることの方が重要ではないか」などの意見が出た。
シンポジウムではタイ、ベトナムも報告。ベトナムの担当者は感染を抑え切れていない現状を話し「農家、地域、国家の各レベルで防疫対策を講じる必要がある」とした。