農水省によると、2022年度のカラスによる農業被害は13億4300万円で、鳥類全体の5割を占める。畜産では、牛の乳房や背中を突いたりする他、家畜伝染病のウイルスを農場に持ち込む存在としても指摘される。
カラス撃退レーザーは、山陰パナソニック(島根県出雲市)が、県内外の畜産農家への聞き取り調査を行い、音楽ライブで使われるレーザー機器を製造する東京のメーカーと共同開発した。
レーザーの色は、カラスが攻撃されていると認識するという緑を採用。照射と消灯を5分ごとに繰り返し、装置から25~35メートルの範囲まで効果がある。柱や壁などに装置を設置し、場所に合わせて0~355度の範囲で角度を調整できる。レーザー光は三角、四角、丸などと自動で形を変えながら、拡大と縮小を繰り返す。

導入数は今年11月末時点で全国で1000台以上。同県浜田市で乳牛を中心に約1400頭飼養する浜田メイプル牧場は、22年9月に使い始め、現在は17台が稼働する。取締役の松永一成さん(26)は「効果の持続性は抜群」と話す。以前は花火などで追い払っていたが、カラスはすぐに慣れてしまったという。装置の導入で、カラスに突かれたストレスで牛が乳房炎になり、搾乳できないといった被害もほぼゼロになった。
装置の耐久性は3~5年で、全国の代理店を通じ平均25万円前後で販売する。電気の配線工事が必要な場合もある。レーザー光は牛やヒトの目に負担が小さい強さに調整されているが、周辺民家、公道、上空に向けないことを注意点に挙げる。
(西野大暉)