熊本県のJAたまな中央集荷センタートマト部会は、土着天敵・タバコカスミカメによる、黄化葉巻病ウイルスを媒介する害虫・タバココナジラミの防除試験に注力する。総合的病害虫・雑草管理(IPM)による農薬の散布回数低減やコスト削減に加え、地域での環境に配慮した持続可能な栽培に期待がかかる。
部会は108人が47・9ヘクタールで「かれん」を中心に「麗容」「れおん」を栽培する。コナジラミへのIPMを手がける中、2022年から新たにタバコカスミカメによる防除試験を開始。部員や行政、メーカーなどが、情報を交換しながら取り組む。
黄化葉巻病の原因は、主にコナジラミが媒介するウイルスだ。芽先の葉が黄化して縮れ、株の成長が止まる。治療法はなく、施設栽培では作物が全滅する場合もある。従来、農薬散布や防虫ネットを使うなどの対策を講じてきた。だが、農薬への抵抗性を持つようになり、効果の低下を懸念。環境にも優しい天敵の活用に着手した。
タバコカスミカメは、従来の天敵より大型で捕食量が多く、コナジラミ類の卵や幼虫の他、アザミウマ類の捕食も期待される。玉名地域にも生息しているため、捕獲することで導入費も削減できる。植物のクレオメをハウス内外に植えて飛来、定着、増殖を図る。

8月から3月まで、農薬防除やハウス内への侵入を防ぐといった従来の対策を取り、暖かくなる春先の4月ごろから天敵による防除で発生を抑える。
タバコカスミカメはナスなどで実績があるが、トマトでは使わなかった。コナジラミの卵や幼虫を食べる一方、成虫をほぼ捕食しない。このため秋に、ハウス内へ成虫が飛び込んで生育初期に感染・発病する懸念があったためだ。
一方で、同病の耐病性を持つ品種の普及率が約85%と進み、生育初期の感染・発病リスクが下がったため、実証しやすくなった。
月に1回ほど、JAと行政、関係機関の職員らが試験圃場(ほじょう)4カ所を調査。結果を共有し改善点などを話し合う。本年産から部会員への周知や、新規取り組み者向けの検討会や手引の作成もする。
昨年12月、同部青年部(40歳以下の後継者で構成)が玉名市で現地を確認した。中島聡弘青年部長は「今後も状況を確認し、本格導入を検討したい」と話す。