全国有数のセリの産地である秋田県湯沢市。とりわけ三関地区で栽培されている「三関せり」は、白く長い根が特徴で「根っこうまい根~!」のキャッチコピーで親しまれている。地域団体商標の認定を受けるなどブランド化を進め、2018年から連続して販売額1億円以上を保つ。地元のJAこまちでも、オリジナルレシピを開発、発信するなど消費拡大を支援している。
「三関せり」の栽培は5月、苗を取るために畑で親株を養生するところから始まる。親株が繁茂する8、9月ごろ、茎や匍匐枝(ほふくし)を取って葉と茎を切りそろえる。その後、セリ田に作付けして収穫を迎える。
JAこまち三関せり出荷組合は組合員44人で、露地2・3ヘクタールとハウス4・0ヘクタールを栽培している。定期的に圃場(ほじょう)巡視会や他産地への視察研修を実施。栽培技術や意欲の向上を図り、今季は出荷量65トンを目指す。
組合員のうち40代以下の生産者は17人と、次世代の育成も進んでいる。今年2月には収穫体験ツアーも開き、新規就農者の獲得にも力を入れる。

他産地との差別化や生産組合の結束を強化するため、JAこまちの支援で地域団体商標に申請し、14年4月に認定された。首都圏で試食会を開き、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)による地域団体商標カードで取り上げられたこともあって知名度が向上。東日本大震災後の復興で広まった仙台せり鍋のブームも追い風となって、人気が高まった。
同組合の組合長、奥山恭悦さん(68)は「県内外から注目を集め、うれしい。若手と手を取り合って伝統野菜を後世に残したい」と話す。後継者で娘の真希さん(29)は「先輩たちの知恵を借りながら『三関せり』のおいしさを全国に広めていきたい」と意気込む。
JAは、生産拡大支援事業で後押しする。石山祐輔指導員は「販売促進し、農家所得の確保と持続可能な農業を目指す」と語る。
地産地消を進めようと、JAは「三関せり」などを使ったオリジナルレシピを開発している。「三関せり」を使った「せりババロア」は職員が考案した。24年12月にホームページで公開し、日本農業新聞で記事が掲載されると、レシピ全体の閲覧数が約3倍に伸びた。引き続き、部署を超えて「三関せり」をはじめ地元産食材をアピールする考えだ。