西日本豪雨からの復興や、高齢化によるかんきつ生産量の減少などの課題に立ち向かい、産地の維持・強化を目指すJAえひめ南のみかん学校が、4月で2年目を迎えた。初年度は5人が入校し、1年間の研修を終えた4人が就農。本年度は県内外から2年目の研修生を含む4人が入校し、担い手を目指している。

同学校の講師はJAの他、県の普及員やJA全農などの関係機関が務める。生産者でつくる果樹同志会や共選も協力し、地域ぐるみで現場での生きた技術や経営ノウハウを早期に習得し、円滑に定着できるようにしている。研修費用は無償で、条件を満たせば国の就農支援制度も利用できる。宇和島市にある旧JA喜佐方支所ガソリンスタンドを改修して開設した。
1年コースと2年コースを設け、農機の使い方やかんきつの栽培知識・技術を座学と実習を通じて学ぶ。約2ヘクタールの研修圃場(ほじょう)では、温州ミカンやポンカン、「河内晩柑(ばんかん)」などを管理。県オリジナル品種の「愛媛果試第28号(紅まどんな)」や「甘平」「愛媛果試第48号(紅プリンセス)」も改植した。研修生は6月、簡易園内道の施工や、近年拡大する獣害対策のためのワイヤメッシュの設置を学んだ。

同学校では、研修生が就農する圃場を確保するため、農家から園地を借りて研修圃場を整備する。就農する際には、のれん分けで受け取る仕組み。3月に1年コースを修了した佐々木一行さん(50)は、のれん分けを受けた園地を含む計184アールで就農した。「実習を通してミカン作りの大変さや楽しさを学び、地域の農業を支えるための責任を実感した。園地を維持しながら、新植や改植を進めていきたい」と展望する。
本年度、入校した大川崇利さん(43)は栃木県の農家以外の出身。沖縄・千葉・北海道・愛媛など全国各地で農業の季節労働に従事してきた。その中で、愛媛県のミカン収穫を通じてかんきつ農業の魅力を感じたという。「技術を学び、宇和島市のかんきつ産業の発展に貢献できる農家を目指したい」と意欲をみせる。
JAの吉見一弥組合長は、「仲間と互いに切磋琢磨(せっさたくま)し、研修で得られる経験を大事にしてほしい。そして、かんきつ農業の新たな担い手として活躍してほしい」と期待を込めた。