「農協牛乳」が1日、発売から50周年を迎える。JA全農の発足時にシンボルとなるような独自ブランドとして開発。成分無調整牛乳の先駆けで、消費者の絶大な支持を得て生乳の需要拡大に貢献してきた。全農は同日、半世紀の歴史や酪農家の思いなどをまとめた記念サイトを公開する。
全農が発足した1972年に農協牛乳は誕生した。当時、生乳生産の伸びに需要が追い付かず、需給緩和が問題となっていた。乳脂肪分を調整した成分調整牛乳や加工乳が中心だった中で、生乳そのままのおいしさを伝えようと、成分無調整を前面に打ち出した。瓶入りで牛乳販売店を通じた流通が主流の当時、1リットルの紙パック入りで量販店に直接販売した点も画期的だった。
3年間の販売目標だった120万本を2年目に達成するなど販売を大きく伸ばし、生乳の需要拡大に貢献した。成分無調整や紙パックの牛乳は現在では当たり前になり、農協牛乳の開発が「日本の牛乳市場を大きく変えた」(全農)。
「農協牛乳」は全農が商標権を持ち、現在は全農が許諾した関係乳業会社がそれぞれ、製造・販売する。
全農は関東・東海・関西などで販売する協同乳業と連携し、新たな付加価値の創造に取り組む。その柱の一つが生乳本来のこくや香りを残せる新たな殺菌製法。電気エネルギーを活用した製法で、2016年に同社が牛乳業界で初めて導入した。
酪農家と連携した情報発信にも力を入れる。21年からは、親子が参加できるオンライン牧場体験を開く。スーパーの陳列棚では、消費者に向けた動画広告で酪農家の思いを発信している。
全農は、記念サイトを同日公開。農協牛乳に携わる酪農家と家族、全農や協同乳業の関係者らが登場。生産へのこだわりや開発秘話などを掲載する。記念ロゴも作成し、同日からパッケージにあしらう。
全農は「生乳需給の緩和や飼料高騰で、酪農現場は先が見えない状況だ。これまでの取り組みを生産者や消費者に知ってもらい、消費拡大につなげたい」(酪農部)と力を込める。