ライフスタイルの変化で仏壇を手放す人も増える中、新たな供養の形が広がっている。静岡県の会社は、処分の相談が増えたことをきっかけに、置き場に困った仏壇を「手のひらサイズ」にリメークするサービスを開始。ガラスの仏壇や遺骨を納めるフォトスタンドなど、インテリアに合う仏具も登場している。
今ある仏壇のパーツを再利用しミニ仏壇によみがえらせるのが、仏壇塗装業「稲垣塗装所」(静岡市)が今年2月に始めたサービスだ。提携する寺院で魂抜きの儀式を行った後、職人の手で解体して高さ6・5センチ、幅16センチ、奥行き10・5センチほどに作り変える。
コースは3種類で、欄間の装飾など仏壇の一部を再利用する「梅」、元の仏壇だけで作り変える「竹」、大きさや形も選べるフルオーダーの「松」があり、料金は11万8000円から。
専用の小さなおりんや戒名を印字した高さ6センチの位牌(いはい)など仏具のオプションも用意する。

一方で「寂しさや申し訳ない気持ちを抱えている人も多い」(同社)といい、仏壇を処分せず、満足してもらえる方法として考えたのが、手元に残せるサイズに再生することだった。
離れて暮らす家族で分け合うこともできるよう、回収した仏壇から複数の「手のひら仏壇」を制作することもできる。
サービスの対応エリアは静岡、神奈川、愛知、東京で他エリアは要相談。広報の稲垣亘佑さん(31)は「親や祖父母から受け継いだ仏壇を形に残すと喜ばれる。故人を思い出したり、供養したりする文化を継承したい」と話す。
広がる手元供養 骨つぼ・位牌故人しのぶ
経済産業省によると仏壇を含む「宗教用具小売業」の2021年の売り上げは1185億円で、約20年前(02年)の2705億円から半減。市場は縮小しているが、現代の生活や住宅事情に合った仏具も登場している。

サイトを運営する終活関連サービスの「鎌倉新書」(東京)によると「仏壇じまい」でコンパクトな商品に買い替えたり、墓を持たず海や山に散骨した人が「遺骨の一部を残したい」と考え、手元で供養できる商品を選んだりするという。
第一生命経済研究所の12年調査では「仏壇があった」と答えた人は66%、「仏壇がある」と答えた人は47%で、現在の保有率はさらに下がっている可能性がある。
一方「形は変わっても、何かに手を合わせたいという思いを持つ人は多い」と鎌倉新書の太島悠輔さん(34)。「毎日仏壇に手を合わせる人もいれば、常にペンダントを身に着けて故人を思い出す人もいる。仏壇の在り方もニーズに合わせて変わってきている」