8日に概算金を提示した東北地方の全農県本部では、秋田「あきたこまち」や山形「はえぬき」、福島中・浜通り「コシヒカリ」が1000~1800円高で設定。「全国的な需給改善や生産資材の高騰に配慮した」(JA全農あきた)と話す。宮城「ひとめぼれ」も1200円高。
中・外食需要回復を受け、業務用の仕向けが多い銘柄では1500円以上上げる動きが広がった。北海道「ななつぼし」が1000円高、栃木「コシヒカリ」が1800円高、茨城「コシヒカリ」が1700円高などとなった。
一方、高価格帯銘柄は北海道「ゆめぴりか」が100円高、山形「つや姫」が100円高、新潟・一般「コシヒカリ」が200円高など上げ幅は小さかった。物価高で販売が苦戦するとの見通しがある。
概算金の上昇は、前年産に続く主食用からの作付け転換が奏功したからだ。燃油や資材など生産コストの高騰が続く中、「現段階で支払い可能な最大水準を示した」(JA全農とちぎ)など、農家の所得確保にも配慮した。
ただ、大幅な需要低迷を招いた新型コロナウイルス禍前の19年産の水準には届いていない。秋田県立大学の中村勝則准教授は「数十ヘクタールの規模で効率的な経営をする農家がようやく再生産できる水準だ。生産コストが増える中で将来への十分な投資は難しく、稲作経営の持続性を期待できる金額にはない」と指摘する。