「シャインマスカット」は、良食味で種がなく皮ごと食べられる簡便さで人気が定着。海外ニーズも高まり、輸出額・数量ともに上昇傾向だった。黒系ブドウからの改植が進み、栽培面積が拡大。2022年の各地区大手7卸の取引量は12年比で13倍となった。
全国果実生産出荷安定協議会(全果協)によると、23年産のシャインの栽培面積は前年比11%増の1932ヘクタール(会員主産14県系統出荷分の合計)を見込み、今後も拡大が続く。増産下でも相場は上げ、22年のシャインの日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は1キロ1966円で12年比で6割高だった。
だが、23年の相場は8月中旬以降、平年(過去5年平均)比1割安で推移する。東京の青果卸は、面積増加と成園化に加え、今年は輸出が不振で一層出回り量が増え、「“シャインバブル”の崩壊に追い打ちがかかった」とみる。都内の輸出業者は香港向けについて「安価な中国産や韓国産との競合が激しくなっている」と話す。東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出の影響で日本産を敬遠する動きもあるという。
一方で加工向け需要は拡大している。酒類販売を手掛けるオエノングループの合同酒精は7月、長野県産シャインの果汁を使ったチューハイを発売した。生果需要が高く、加工用は入手しづらい状況が続いたが、「生産量の増加で果汁向けにも流通してきている」(商品開発担当者)。ファストフード大手のマクドナルドも同県産果汁を使ったスイーツを期間限定で発売するなど、加工食品が続々と登場している。
主産地のJA全農長野は「シャインの魅力を広く知ってもらう良い機会」(果実花き課)と捉え、販路拡大に期待する。
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