日本農業新聞が全国のJAトップを対象にした調査で、農産物の価格転嫁について尋ねた。「全くできていない」との回答が66・1%、「小幅にできているが不十分」を合わせると94・8%を占めた。「十分できている」はほぼなかった。
価格転嫁が特に必要と感じる品目(複数回答)は「野菜」(81・3%)と「米」(72・6%)が多い。流通が複雑で価格が需給で決まりやすい品目が上位に並んだとみられる。
価格転嫁を進める上での課題を尋ねると、最多が「価格形成の仕組み」だった。後に続くのが「国民各層への合意形成など、政策後押しが弱い」「消費者の低価格志向・賃金の伸び悩み」などとなった。
各JAは、出荷・販売先に資材高騰など生産現場の負担が増大する状況を伝え、「再生産価格の確保に向けた要請をしている」(愛知県のJA)。ただ、物価高で消費が冷え込み賃金も伸び悩む中、「農産物の値上げに消費側の抵抗感がある」(富山県のJA)と課題を指摘する。
適正な価格形成に向けた政府の法整備は、「期待しており、ぜひ作るべきだ」とする回答が84・2%に上った。当業者間だけでの対応に限界があり、国の後押しを求める声が強い。(次回は21日付)
JAトップアンケート結果(問5~8、自由記述は省略 310JAの回答を集計)
問5 高止まりする生産コストを農産物の販売価格に転嫁できていますか。一つ選んでください
- 全くできていない 66・1%
- 小幅にできているが、不十分 28・7%
- 十分できている 0・3%
- どちらとも言えない 4・8%
問6 価格転嫁が特に必要と感じる品目はありますか。三つまで選んでください
- 野菜 81・3%
- 果実 31・6%
- 米 72・6%
- 牛肉 29・4%
- 生乳 30・3%
- 麦・大豆 21・0%
- 花 7・4%
- その他 8・7%
- 生産サイドの価格交渉力が弱い 3・9%
- 価格形成の仕組み(需給で決まり、コストを反映しづらい) 49・4%
- 生産費など説得力のある情報が足りない 2・6%
- 小売り(スーパーなど)の価格交渉力が強い 6・5%
- 消費者の低価格志向・賃金の伸び悩み 15・8%
- 農業生産の現状周知や国民各層への合意形成など、政策面での後押しが弱い 19・4%
- その他 2・6%
- 期待しており、ぜひ作るべきだ 84・2%
- 全く期待していない 6・8%
- よく分からない 9・0%
日本農業新聞が10月、全国のJAトップ層向けに行ったアンケートの回答をまとめる。農政の重要課題に対する認識や危機感など、現場の肉声を紹介する。