日本農業新聞は、都道府県や政令市など計121の自治体を対象に、政府が検討している学校給食無償化についての考え方をアンケートで聞いた。回答を寄せた117自治体の主な記述内容をまとめた。
国による学校給食無償化について
■賛成 69%
- 地域によって無償化実施の有無、助成対象の年齢や所得制限の有無などが異なっている。どこに住んでも安心して子どもを産み育てることのできる環境を国は保障すべきだ。
- 少子化など社会情勢が変化する中、子育て世代の経済的負担を軽減する支援が求められる。
- 食材費が高騰する中、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金による支援が実施されているが、子育て支援、少子化対策の一環として国の責任で学校給食無償化を進めてほしい。
- 本来、学校給食は国の施策で無償化された教科書と同様に、就学義務と密接な関わりがある義務教育無償の範囲に位置付けるべきだ。
- 保護者が費用負担の心配をせずに安心して子育てが行える環境をつくる上で有効だ。
- 給食費は学校教育の基礎経費であり、無償化を望む声が多い。無償化に取り組む自治体も増えている。
- 学校給食法第2条で定められている「適切な栄養の摂取による健康の保持増進」「各地域の優れた伝統的な食文化についての理解」は国の責務だ。
- 子育て世帯の経済的負担の軽減、児童生徒の栄養源の確保、学校や市区町村の給食費徴収事務のコスト減などを総合的に考えてほしい。
■どちらとも言えない 31%
- 国から無償化に関する具体的方策が示されていないため、回答が困難だ。
- 本県だけでも年間80億円と見込まれる財源を恒久的に確保できるかどうか不透明だ。
- 憲法第62条で、「義務教育はこれを無償とする」と規定されているが、これは授業料不徴収の意見と理解している。給食無償化は財源の検討が必要で、現段階でどちらとも言えない。
- 国、都道府県、市町村のうち、どこが財源を負担するのか不明だ。
- 多子世帯など真に支援が必要な世帯に無償化の対象を絞り、子育て世帯以外からも理解を得られる制度にしてほしい。
- 給食無償化は子育て世代の支援施策のひとつだが、継続的な財源確保や食育への関心が低下する懸念など、さまざまな課題がある。
- 財源全額を国が負担するのであれば反対しないが、市町村に負担させるのであれば、政策の優先度や負担額が異なるため、適切ではない。
- 給食無償化は大変望ましいが、多額の財源を継続して確保する必要があり、財政的な負担が大きな課題。自治体によって対応に差が生まれている現状について、公平性の観点から国の責任で方向性を示してほしい。
■反対 0%
財源負担のあり方
- 住んでいる地域にかかわらず、誰もが安心して子育てできる環境を整備するため、国の責任と財源による制度設計をすべきだ。
- 自治体間の財政力格差で教育の根幹にかかわる給食制度に格差が生じないよう、国の責任で無償化のための財政措置をとるべきだ。
- 無償化の財源を市の予算で負担することは難しいため、国が財源を確保してほしい。
- 一部の自治体が学校給食費の完全無償化を実施しているが、自治体間でばらつきがあることは望ましくない。学校給食費を国の負担としてほしい。
- 学校給食無償化は、子育て支援策として有効だが、児童生徒数の多い本市では、単独での無償化は財政的に非常に厳しいのが現状。
- 国の財源負担を明確化することで、無償化の有無や給食費の額といった自治体間の格差が解消され、安定した学校給食の供給につながる。
- 自治体間で格差が生じないよう、全国一律の無償化が必要。国の財政負担による恒久的な制度として早期に実現してほしい。
学校給食法改正の必要性について
■必要 70%
- 現在、学校給食の無償化に法的根拠がない。法改正することで、国や自治体が無償化を推進しやすくなるのではないか。
- 学校給食法第11条で、学校給食の経費は保護者負担と定められている。無償化するなら、条文を改正する必要がある。
- 学校給食法第12条で、保護者に学校給食費の全額または一部を補助する自治体に、国は経費の「一部」を補助できると定められているが、「全額」ではない。
- 将来にわたって無償化を継続する根拠を明確にするため、必要な法改正を行うべきだ。
- 教科書無償化は「無償措置に関する法律」によって明文化されている。給食無償化についても、国が立法もしくは法改正を行い、法的な不整合を解消した上で、財源措置を講じるべきだ。
■どちらとも言えない 26%
- 学校給食法改正は国で議論すべきだが、1954年公布で法律自体はかなり古い。必要に応じて改正することも考えられる。
- 国による学校給食無償化の目的が、時限的な物価高騰対策か、恒久的な義務教育無償化か、その他なのかによって意見は変わる。
- 学校給食法第11条は、保護者に代わって給食費を負担することを禁止する趣旨ではないとの意見もあり、各自治体の無償化事業を国が補助金を支給することで対応可能とも考えられる。
■不要 4%
制度設計に望むこと
- 給食提供を義務化するか。献立内容はどうするか。自治体の財源負担はどうなるか。制度の仕組みづくりに多くの課題がある。
- 保育料や医療費のように自治体の財政力で差がつかない仕組みにする十分な検討が必要だ。
- 学校給食は地域の食材や伝統食を取り入れており、独自性が損なわれない制度が望まれる。
- 全国一律で均一な支援が必要だ。地域ごとに完全給食、選択制給食と、運用方法が多様化している。その多様性が否定されないようにしてほしい。
- 学校給食を実施していない自治体やアレルギーなどの事情で給食を食べられず、弁当を持参している場合の対応も検討すべきだ。
- 例えば、デリバリー給食は、人件費や運送料を加算して給食費が設定される。このように自治体によって運営の実態や給食費の扱いが異なるため、不公平とならないよう調整してほしい。
- 無償化は学校や自治体の事務負担が極力少ない形で進めてほしい。
- 2023年6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」では、給食の実施状況や地方自治体による無償化の状況について、全国調査を「速やかに行い、1年以内に結果を公表する」とした上で、「課題の整理を丁寧に行う」とされた。一方、無償化の実施時期は明記されなかった。