地震による停電や断水、道路の寸断に伴い、畜産農家では家畜に与える水や餌の不足が深刻化している。
県のブランド牛「能登牛」を1000頭飼養する能登牧場(能登町)では停電復旧に伴い、地下水をポンプでくみ上げられるようになった。ただ、餌不足は解消していない。平林将専務は「最低限の量を与えている。それでも、いつまで持つか分からない」と漏らす。
被災地では道路が緊急車両優先で、餌の運搬の支障になるケースもある。平林専務は「牛も生き物。人命優先はもちろんだが、畜産に関わるトラックも緊急車両として通してほしい」と訴える。
野菜出荷にも影響が出ている。七尾市で1・3ヘクタールで野菜を作る大森農園は、断水でダイコンやカブを洗えず出荷できずにいる。大森幸太郎さん(40)は「トイレや風呂の水さえ足りず、農業に回せる水はない」と話す。
JA志賀では、カントリーエレベーター(CE)や低温倉庫など米関連施設で被害が出た。JA営農部の土田茂樹部長は「現状、CEは米を取り出せない状況。復旧見通しは立っていない」と語る。職員が被災し手付かずの施設もある。
能登町で避難生活を続ける藤田繁信JAのと組合長は「管内では目の前の命をつなぐことで精いっぱい。農業被害を把握するどころではない」とこぼす。