食品製造業の取引価格交渉 立場弱く転嫁困難 労組調査
調査は、食品関連企業の労働者らでつくる日本食品関連産業労働組合総連合会(フード連合)とUAゼンセンが2023年9、10月に実施。営業を担当する加盟労働組合員にアンケートを行い、独占禁止法や下請法、農水省の適正取引推進ガイドラインで問題となり得る14事例の発生状況を聞き、110社から4931件の回答を得た。
回答のうち、優越的な地位を乱用するなど問題となり得る事例は3346件あった。最多となった取引価格改定に関する事例は514件となった。
価格改定関連の内訳を見ると、取引先の一方的な理由で納品価格を据え置かれた事例が280件と、4割を占めた。改定の見積もりを提出したものの了承を先延ばしにされているなどの声があった。価格転嫁が受け入れられても一部の値上げにとどまったケースは3割(189件)発生。物流費や包材費は転嫁が認められないなどの事例があった。
他に、訪問を避けるなど交渉を拒否されたり、改定の代わりに別の名目で費用を要求するなど不当な条件を付けられたりする場合もあった。
フード連合は、食品の値上げは家計への影響が大きいことから、食品製造は価格競争のしわ寄せを受けやすいと指摘する。「価格転嫁は賃上げの原資にもなり重要だが、交渉力の弱い中小企業などでは取引先に申し出にくい場合もある。適正な価格で評価する公正取引の風土を根付かせることが欠かせない」と強調する。「取引慣行が改善していると感じるか」という問いでは、「変化は感じない」が65%と最多だった。
問題となり得る事例で次いで多かったのは、日当なしでの陳列の手伝いなど「従業員の派遣、役務の提供」で479件だった。